■劇場版でのワッケインはどう描かれた?

 テレビアニメ版と劇場版では尺の違いもあり、ワッケインについてもかなり異なる描かれ方をしている。物語序盤、ルナツーにたどり着いたホワイトベース隊を拘束するどころか、ワッケインは地球のジャブローに直行するよう伝える。それも護衛艦までつけて、即座にジャブローに送り出すのだ。

 ルナツーを発つホワイトベースを見送るワッケインに、部下が「司令、(地球まで)たどり着けますかね?」と問いかけると、ワッケインは「知るものか……我々にできることといえば、サラミス1隻つけてやるだけ」と苦しい胸の内を明かしている。

 上の命令により、素人同然のホワイトベース隊を見送ることしかできない無力感が伝わってくる場面だった。

 さらにワッケインは「ジャブローは前線のことを何も……」と愚痴り、「ジオンとの戦いがまだまだ困難を極めるというときに、我々は素人まで動員していく。寒い時代だとは思わんか」と目頭を押さえるのである。

 劇場版でのワッケインは、素人同然のクルーや多くの避難民が乗ったホワイトベースがジャブローに向かう大変さを誰より感じているように見えた。また、そうまでしなくてはならない戦争の無情さも嘆く、非常に人間的な部分が感じられる場面だった。

 この劇場版のワッケインを見て、テレビアニメ版とはまた異なる印象を受けた視聴者も多いのではないだろうか。


 このように初代『機動戦士ガンダム』のワッケインという人物について振り返ってみた。また、ガンダムシリーズのテレビアニメ最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』にも彼は登場している。

 敗色濃厚となった連邦は、宇宙要塞ソロモンをジオンの拠点である月面都市グラナダに落とすという作戦を敢行、その指揮をとったのがワッケインである。

 宇宙要塞を都市部に落とすという、条約無視の無差別攻撃であり、非人道的な策といわざるを得ない。『ジークアクス』の中では彼がこの手段をとった明確な理由は描かれていないが、『機動戦士ガンダム』でのワッケインという人物を知っていたら、そうせざるを得ない深い事情があったものと推察できる。

 ガンダム好きの皆さんは、ワッケインという軍人についてどのような印象を抱いているだろうか。

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