
テレビアニメ『機動戦士ガンダム』において巨大な組織として描かれた「地球連邦軍」。その中には、レビルのようにヨーロッパ方面軍総司令官として前線で指揮をとる者や、地球の本拠地「ジャブロー」を守り抜いたゴップのような者もおり、高官にもさまざまなタイプの軍人がいた。
作中では尊大な態度で描かれた軍人も多く、視聴者目線だと嫌な印象を受けた人物も少なくないだろう。また、中には初めて見たときの印象と、物語終盤になってからの印象が一変するケースも多い。
その代表格が宇宙要塞基地「ルナツー」の司令を務めるワッケイン司令ではないだろうか。彼はストーリーの序盤と終盤に登場し、物語が進むにつれて印象が大きく変わっていったキャラだ。
今回は『機動戦士ガンダム』のワッケイン司令の登場シーンを振り返りながら、どのような人物だったのかをおさらいしたい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■いい印象を抱けなかったルナツーでの初対面
テレビアニメ『機動戦士ガンダム』でワッケインが初登場したのは第4話のこと。ジオン軍の攻撃を受け、多くの避難民を乗せてサイド7を脱したホワイトベースは、ルナツーに到着する。
負傷したパオロ艦長に代わって艦長代行の重責を担うブライト・ノアは、軍艦での逃亡生活に疲弊した避難民が休息できる場所を求めた。
しかしワッケインは、ルナツーに民間人を収容する余地はないと却下。そのうえホワイトベース隊の主要メンバーを軟禁する。軍の最高機密であるホワイトベースやガンダムを使用した罪を問う軍事裁判にかけると言い渡したのである。
さらにブライトは、ワッケインにシャアの襲撃があることを警告したが、それも無視。その後、実際にルナツーが奇襲されると、シャアの策略にハマったワッケインは、乗艦であるマゼランでゲート付近を塞いでしまう。
その後、独自の判断で脱出し、ガンダムの封印を解いてシャアと戦おうとするホワイトベース隊の動きを制止しようとする。こうしたワッケインの一連の行動は、視聴者の目には「頭の固い軍人」と映った。
しかし、このときのワッケインの判断は、宇宙の要所を預かる立場としては当然といえるかもしれない。このときブライトですら経験のない10代の若い士官候補生にすぎず、最高機密であるガンダムに乗り込むアムロに至っては15歳の少年である。
今思えば、これまでの彼らの活躍を直接見たわけではないワッケインからすれば、連邦の切り札であるガンダムを得体の知れない若者に簡単に託すことができないのも理解できる。