■霊感が強いだけでは説明できない桑原和真という異質な存在

 飛影・蔵馬、そして幽助には、それぞれ「妖怪」という明確な強さの由来が描かれている。一方で桑原和真は純粋な人間でありながら、彼らと肩を並べ、強敵たちと渡り合うという点で、明らかに“異質”な存在だ。

 幼少期から強い霊感を備え、幻海の継承者選考会では「霊剣」を発現。その力はやがて「次元刀」へと進化し、さらにOVA『映像白書』では第二回魔界統一トーナメントに参戦する姿が描かれた。最終的にはA級上位クラス、あるいはそれ以上の実力に到達していたと推測できる。

 背景には、桑原家に秘められた資質があるようだ。姉・静流は彼以上の霊感を持ち、さらに魔界統一トーナメント後に登場する父親も、霊界や魔界のことを以前から知っていた様子で只者ではないことが仄めかされている。こうした家系の特殊性は無視できないだろう。

 加えて、暗黒武術会決勝で使用した「試しの剣」の存在も見逃せない。剣を作った美しい魔闘家鈴木自身が“どんな副作用が起こるかわからない”と語っていた危険な武具であり、使用後に霊力を一時的に失ったものの、その後、突如として「次元刀」を発現させた経緯を考えれば、この経験が潜在能力を刺激した可能性は十分にある。

 血筋か、武器の影響か、あるいは本人の精神的成長か。答えは最後まで明かされないまま。しかしひとつだけ確かなのは、桑原が「ただの霊感持ちの不良」では終わらない、作中屈指の“謎”を背負った存在だということだ。

 

 飛影、蔵馬、桑原。主要キャラクターでさえも説明しきれない謎を抱えており、本作には他にも数多くの謎が散りばめられている。そうした語り尽くされない余白があるからこそ、読者は考察を重ね、再読するたびに新たな発見に出会えるのだ。

 『幽☆遊☆白書』が時代を超えて語り継がれてきた理由のひとつは、まさにこの“謎の力”にあるのかもしれない。

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