別人みたいな序盤の飛影、妖狐蔵馬に深手を負わせた“追跡者”の正体、桑原和真の強さの秘密…『幽☆遊☆白書』に残された「未回収の謎」の画像
『幽☆遊☆白書』25th Anniversary Blu-ray BOX 霊界探偵編【特装限定版】(バンダイビジュアル)©Yoshihiro Togashi 1990年-1994年 ©ぴえろ/集英社 ©1994「幽遊白書 冥界死闘篇 炎の絆」製作委員会

 90年代、集英社の「ジャンプ黄金期」を代表する冨樫義博氏の『幽☆遊☆白書』。主人公・浦飯幽助や仲間たちの成長、強大な敵との戦い、そして独特のユーモアとシリアスが入り混じる展開は多くの読者を魅了してきた。

 アニメ化もされ、今なお多くのファンに語り継がれる名作だが、物語を読み返すと「結局あれはどういうことだったのか?」という未回収の謎や設定が残されていることに気づく。
 そこで今回は『幽☆遊☆白書』に残された代表的な謎を、あらためて振り返ってみたい。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■高笑いを繰り返す…まるで別人のような序盤の飛影

 クールで皮肉屋、妹を影から見守る寡黙な兄。作中を通して描かれる飛影の性格は一貫しているように思える。だが、初登場時を振り返ると「本当に同じ人物なのか?」と疑いたくなるほどのギャップがあった。

 幽助との初対決では彼の幼馴染の雪村螢子を人質にとり、「降魔の剣」で妖怪へと変貌させようとする残虐さを見せた。さらに高笑いを繰り返すお喋りな性格や、全身から目玉が現れる異様な変身は、後に確立される飛影像とは大きくかけ離れている。

 この違いについて、ファンの間では「降魔の剣の魔力による暴走ではないか」という説が囁かれてきた。

 人間を魔物に変えてしまうほどの魔剣であれば、使い手の精神や性格を歪めても不思議ではない。また、終盤で明かされた「霊界がD級妖怪を洗脳し、人間界で悪事を働かせていた」という事実を踏まえると、飛影自身も霊界の干渉を受けていた可能性もあるだろう。

 一方でメタ的な観点から見てみると、作者・冨樫氏が「初めっから飛影を仲間にするつもりで考えてたらあんなたくさん目玉つけてないですよ」(「冨樫義博×岸本斉史SP対談」より)と発言している通り、初期の飛影は純然たる敵キャラとして描かれたことが推測できる。

 ところが人気の高まりや物語の流れによって仲間へと転じた結果、後の性格像との間にズレが生じた。少しドライではあるが、そう考えるのが真相に最も近いのかもしれない。

■伝説の極悪盗賊・妖狐に深手を負わせた“追跡者”の正体

 次に、蔵馬の謎を見ていこう。登場時に蔵馬は、“15年前、強力な追跡者にかなりの深手を負わされ、霊体の状態で人間界に逃げ込んだ”と語っている。それから長らく、この“追跡者”は謎とされてきた。

 妖狐蔵馬といえば、1000年前の魔界で盗賊団を率いた伝説の極悪盗賊だ。配下には後に魔界三大妖怪となる黄泉すら従え、その影響力は絶大だった。しかし、そんな妖狐に致命傷を与えた“追跡者”とは、いったい誰なのか。

 実は、作中ではその答えが示唆されている。元霊界探偵・仙水忍が暴れる「魔界の扉編」の終盤だ。

 霊界特防隊の舜潤と倫霾の会話にて「特防隊の手にかかればA級妖怪とて無事にはすまん」「へっ また妖狐を追いつめた時の自慢話か 聞きあきたぜ」と語られ、妖狐を追い詰めたのが霊界特別防衛隊の舜潤であった可能性が浮上したのだ。

 作中では覚醒した幽助にかき回される姿が描かれ、どこか頼りなく見えた霊界特防隊だが、本来の彼らは霊界の中でも選りすぐりの精鋭だ。その中でも舜潤は大竹の後を継いで隊長にまで上り詰めた実力者であるため、伝説の妖狐を窮地に追い込む力を持っていたことは想像に難くない。

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