
テレビアニメ『機動戦士ガンダム』の放送からはや46年。それから現在に至るまで、さまざまなシリーズ作品やスピンオフ作品が誕生し、新たなモビルスーツやモビルアーマーもたくさん登場している。
特に「宇宙世紀シリーズ」と呼ばれる同一の時間軸で描かれる一連の作品においては、初代『機動戦士ガンダム』から最後年を描いた『機動戦士Vガンダム』までのあいだに、約70年の年月が作中で経過したことになる。
それだけに作中での技術の進歩も描かれ、当然70年のあいだにモビルスーツの性能は飛躍的に向上。初代「ガンダム」(RX-78-2)のジェネレーター総出力が1380kW、スラスター総推力55500kgに対し、宇宙世紀の主人公機の中では最後発となる「V2ガンダム」の出力は7510kW、ミノフスキー・ドライブによる総推力は「測定不能」の域にまで達している。
このように作中の時代が進むにつれて登場機体の性能が高くなるのは当たり前のこと。しかし、中には「生まれる時代を間違えたのでは?」と思うような、ハイスペックすぎる機体も存在した。
そこで今回は登場した時代から考えて、どう見てもオーバースペックだと感じた機体をピックアップ。そのような機体が生まれた背景も探りながら振り返ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■のちの主人公機を上回る性能の「ロストナンバー」
OVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場する「ガンダム試作1号機 フルバーニアン」は、一年戦争後の「連邦軍再建計画」の一環である「ガンダム開発計画」から生まれた機体である。
「ゼフィランサス」のコードネームで呼ばれるガンダム試作1号機(GP01)を宇宙での高機動仕様にカスタムしたのがフルバーニアンだ。
宇宙世紀0083年に完成したフルバーニアンのスラスター総推力は、驚異の234000kg。0087年のグリプス戦役で大活躍する「Zガンダム」の総推力は112600kgなので、その倍近い推力を有していることになる。
書籍『ガンダム・モビルスーツ・バイブル 9号』(デアゴスティーニ・ジャパン)では、「ガンダム開発計画」で生まれた機体のことを「オーパーツ」と評していた。GPシリーズの存在は、作中の歴史や記録から抹消されながらも、のちのモビルスーツ開発に影響を与えていることから、「MS史のミッシングリンク」とされている。
ただし、これはあくまでもカタログスペック上の話。Zガンダムには機体の運動性を飛躍的に向上させる「ムーバブル・フレーム」や、発生するGを緩和させる「リニア・シート」などの最新技術が導入されており、このような新技術が投入されたモビルスーツは「第2世代」と区別されていた(なお、これらの技術に加えて可変機構まで有するZガンダムは第3世代に分類される)。
ガンダム試作1号機の位置づけからすると、「第1世代」の限界値と見るのが適切と思われ、より実戦向けに最適化が図られていった次世代モビルスーツへの橋渡しを陰で担った機体といえるのかもしれない。
■高出力に高火力…「恐竜的進化」の象徴
テレビアニメ『機動戦士ガンダムZZ』の主人公機「ZZガンダム」は、0088年に開発された機体。「Zガンダムを超えるガンダム」というコンセプトで生まれた合体・変形機構を有するモビルスーツである。
3体のユニットが合体して構成され、それぞれのユニットごとに高出力のジェネレーターを備えている。合体時の総出力は7340kWを誇り、この数値は65年後に開発されるV2ガンダム(7510kW)に匹敵するレベルである。
ZZガンダムが生まれた0080年代後半の大出力&高性能化の技術の進化速度は異常であり、これを「モビルスーツの恐竜的進化」と呼んだ。ZZガンダムは、まさにその進化を象徴するモンスターマシンだった。
これまでのモビルスーツは、「メガ・バズーカ・ランチャー」のような強力な武装は外部ユニットに頼っていた。しかし、ZZガンダムはコロニーレーザーの20%分の出力を誇る「ハイメガキャノン」を内蔵火器として備えていた点からも、いかに化け物じみているかが分かるだろう。
しかし、圧倒的な高出力による火力の高さと引き換えに、生産性や整備性に難があったとされる。結局ZZガンダムを含めた「第4世代」の大型化や高出力という方向性は、次第に衰退していくのである。