
子どもが生まれると、“ママ友”という新たな人間関係が構築されていく。しかしながら子どもを介した繋がりだからこそ付きあい方も難しく、トラブルが起こりやすいのも事実だ。ママ友付き合いの悩みを抱えている人は、少なくないだろう。
ドラマでも、そんなママ友トラブルを扱った作品は多数存在する。しかもその多くは人間関係が現実以上にドロドロしていて、時に見ていて苦しくなってしまうほど。そこで今回は、ドロドロ系の“ママ友”をテーマにしたドラマを振り返ってみたい。
※本記事は各作品の内容を含みます。
■お受験、嫉妬、見栄、黒い感情から目が離せない『名前をなくした女神』
フジテレビ系で2011年4月から放送されていたドラマ『名前をなくした女神』。このタイトルは、「○○ちゃんママ」と呼ばれ、自分のアイデンティティを失っていく母親たちを象徴している。
主人公は優しい夫・拓水(つるの剛士さん)と息子・健太(藤本哉汰さん)と暮らす杏さん演じる秋山侑子。侑子はリストラを機に家族で引っ越し、健太を編入させた「ひまわりの子幼稚園」で4人の母親に出会う。
生粋のセレブで上昇志向が高く、思い通りにいかない現実に苦しむ人気読者モデルの本宮レイナ(木村佳乃さん)、モラハラ夫に支配されながら必死にいい母・いい妻を演じる安野ちひろ(尾野真千子さん)、学歴コンプレックスで見栄と嫉妬に飲まれる進藤真央(倉科カナさん)、バリキャリの女社長かと思いきや家庭では夫の不倫に悩む沢田利華子(りょうさん)。
彼女たちは、問題を抱えながらも“幸せな家庭”を作るために必死だ。小学校受験もその一つである。侑子は受験など考えてもいなかったが、彼女たちと話すうちに自身も受験を決意する。
しかし、お受験ママの多い幼稚園で「受験は親のエゴ」と言い放つなど、開けっ広げな侑子が入ってきたことで、ピリつきながらも保っていたママ友関係に変化が起こる。そして、黒い願望が目覚めた母親たちは、人の願書を捨てたり勝手に小学校に辞退の電話を入れたり良くない噂を広めたりと、えげつない行動を取り始める。
さらに、二重生活だったり不倫や痴漢をしていたりと夫側の問題も露呈し、大半の家庭が壊れかけてしまう。家庭と受験、ママ友関係で追い詰められた母親たちの行き着く先は……。
本作においてもっともかわいそうなのは、親に翻弄される子どもたちだ。特に、嫌がらせにあう侑子の息子・健太の姿は見ていてつらい。子どもがいる人は、「こんな親が周りにいたら……」と怖くなってしまいそうな作品である。
■ママカーストの中で奮闘するシングルマザー『マザー・ゲーム〜彼女たちの階級〜』
続いては、2015年4月からTBS系の「火曜ドラマ枠」で放送された『マザー・ゲーム〜彼女たちの階級〜』を振り返る。同作は、シングルマザー・蒲原希子(木村文乃さん)がママ友トラブルに立ち向かう痛快ドラマ。全体的にはコミカルでありながら、涙ありシリアスありの感動作である。
物語は、弁当店を経営しながら息子の陽斗(横山歩さん)を育てる希子(木村文乃さん)が、セレブが集まるしずく幼稚園の園長・奈良岡フミの誘いで同園に編入するところから始まる。そこは、見栄と競争心が渦巻き、カーストが根付く場所だった。
頂点に君臨するのは、超セレブな小田寺毬絵(檀れいさん)、医者の妻で園内カーストを仕切る矢野聡子(長谷川京子さん)らお金持ち。さらに、キャリアを捨てて主婦になった後藤みどり(安達祐実さん)やセレブへの憧れが強い幼なじみ・神谷由紀(貫地谷しほりさん)らが絡み合う。
入園早々、希子はマウントをかけてくる聡子にハッキリとモノ申す。その姿は毬絵の心を捉え二人は親しくなるが、同時に希子への周囲からの風当たりはより厳しくなっていった。
だが、気が強い母親たちも裏では苦しんでいる。みどりは夫の浮気とモラハラで心が壊れ、聡子は姑から異常ないびりを受け、由紀はギャンブルと見栄で借金を重ねて転落。毬絵の家もまた、ひきこもりの長男・彬(望月歩さん)が原因で崩壊寸前だったのである。
希子はそんな母親たちの問題に正面からぶつかり、家族の絆を取り戻すきっかけをもたらす。そして、“完璧な母”という呪縛から抜け出した母親たちは、自分らしさを取り戻すのだった。
見方によれば、よその家庭に首を突っ込む希子の行動は大胆すぎるかもしれない。だが、その真っすぐさが母親たちの心に光を灯したことは間違いない。