■皆の想いを背負って…『からくりサーカス』仲間のパーツ移植

 最後は、藤田和日郎さんによる『からくりサーカス』の加藤鳴海の劇的大逆転を紹介したい。

 鳴海は「真夜中のサーカス」を壊滅させるため、しろがねたちとともにサハラ砂漠での決戦に挑んだ。しかし、そこにいた「最古の四人」は鳴海たちよりもはるかに格上で、次々と仲間が倒されていってしまう。

 そんな中、鳴海は重傷を負いながらアルレッキーノと対戦。追い詰めるもあと一歩というところで力尽きてしまう。この時の鳴海の状態は最悪で、大量の出血によって四肢が崩壊してしまう。

 その間も自動人形の攻撃はやむことなく繰り返され、全滅も時間の問題。そんな中で鳴海に手術が施され、失った四肢の代わりに仲間のマリオネットのパーツが移植される。鳴海なら何とかしてくれるという期待を込め、皆が想いを託していったのだ。

 やがて目を覚まし、立ち上がった鳴海の雰囲気や迫力はまるで別人。向かってくるパンタローネをあっさりと返り討ちにし、アルレッキーノも聖ジョージの剣で両断してしまった。

 瀕死の状態になって手術を受け、四肢を付け替えられてからの逆転劇は凄まじい。仲間の強い思いが鳴海を突き動かしたからこそ、力を得られたのだろう。そこには自動人形には理解できない領域の力が働いていた。

 

 コツコツと修行を積んで強くなる展開も手に汗握るが、今回紹介したような「短時間での能力アップ」にもそれぞれドラマがある。いずれにせよ、圧倒的な強敵に主人公たちがどう挑んでいくのか、先が読めない展開にはワクワクさせられるものだ。

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