
1980年代といえば、テレビ、アニメ、ゲーム、おもちゃなど、数々のブームが巻き起こったアツい時代。そんな熱狂の真っ只中を生きたのが、昭和47年(1972年)生まれの芸人・土田晃之。“華の47年組”の一人として、子どもの頃に堪能した「昭和カルチャー」を独自の視点で語り尽くします!
■サッカー漫画じゃないの…?『キックオフ』の衝撃
小2で練馬から埼玉に引っ越してサッカーにハマって以来、サッカー漫画は全部読んでました。
サッカー漫画でいうと、僕らより前の世代でヒットした『赤き血のイレブン』があります。でもやはりサッカーブームになったのは『キャプテン翼』から。『巨人の星』で野球人口が増えたように、『スラムダンク』でバスケブームになったように、『キャプテン翼』の大ヒットで爆発的なサッカーブームが起きました。
小学生の頃に読んでいたサッカー漫画でいうと、『キャプテン翼』もありますけど、同時期に同じ「少年ジャンプ」で連載してた『キックオフ』という漫画もありました。
『キックオフ』の何がすごいかって、一応サッカー漫画みたいなテイストだけど、サッカーをまったくしない。タイトルに『キックオフ』ってついているのに、サッカーのシーンはほとんど出てこない。ただ単に“サッカー部に入った”っていうだけで、サッカー部を舞台にしたラブコメ。
『タッチ』のことも“ラブコメ”って言いますけど、野球のシーンがいっぱい出てきて、野球に関する場面もめちゃめちゃ熱い。それに比べて『キックオフ』は、最初のうちだけちょっとサッカー要素を入れただけで、あとはほぼゼロ。『タッチ』から野球要素を全抜きした感じのラブコメだと思っていただいていいです。
主人公の(永井)太陽くんとヒロインの(川村)由美ちゃんがとにかく見つめ合う。見つめ合うだけで4コマぐらい使います。
「由美ちゃん」「太陽くん」お互いの名前を心の中で呼び合いながらひたすら見つめ合う。周りにハートマークが飛び交って。最後のコマで、2人の周りにいるやつらが“ポリポリ”みたいなことやって終わるのが毎度のパターン。
「しょっちゅうこれやるな」と思いながら読んでました。漫画の内容はまったく覚えてないけど、 「由美ちゃん」「太陽くん」って見つめ合うのだけは覚えてます。
当時のサッカー漫画には『がんばれ!キッカーズ』(「コロコロコミック」ほか)、『はしれ走』(「週刊少年サンデー」)とかあって、その中のひとつが『キックオフ』で……って言うと、漫画の内容知ってるやつから、「いや、あれサッカーしねえじゃねーかよ!」ってツッコまれるっていう。そういう漫画です。
別の意味ですごかったのは『かっとび一斗』(「月刊少年ジャンプ」)。
主人公の(香取)一斗がカンフーの使い手で、サッカー中にカンフーみたいの使って「ちょんわ〜!」って言い出すんです。試合中もルール無視で反則バンバンする、無茶苦茶なサッカー漫画。香港映画でユン・ピョウ主演の『チャンピオン鷹』っていうカンフー使いのサッカーコメディ映画があるけど、それが「『かっとび一斗』じゃん」っていう。まんまそれ。