■あらゆるものを吹き飛ばす破天荒ヒーロー『僕のヒーローアカデミア』爆豪勝己
人々が「個性」と呼ばれる特殊能力を持つことが当たり前となった世界で、無個性として生まれた少年が最高のヒーローを目指し奮闘する物語、『僕のヒーローアカデミア』。
2014年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された堀越耕平さんの代表作であり、大迫力のバトルはもちろん、キャラクターたちの葛藤や成長を描く群像劇も大きな見どころの一つだ。
そんな本作において、作者の予想を裏切るほどの高い人気を博したのが、主人公・緑谷出久の幼馴染であり、彼のライバルポジションの爆豪勝己だろう。
個性「爆破」を活かした高い戦闘力、好戦的な性格に少し乱暴な口調など、あらゆる点で出久とは対照的なキャラクターである。
物語序盤では無個性の出久にちょっかいをかけるいじめっ子であり、どこか刺々しく、高圧的な印象が強いキャラクターでもあった。
作者の堀越さんも、あえて尖った嫌な奴として描いていたというが、予想に反して爆豪は多くの読者の支持を集め、人気投票でもたびたび1位を獲得するなどめまぐるしい活躍を見せる。
実は堀越さん自身も、物語を描き続けるうちに爆豪の魅力に気づき、彼の魅力を徐々に引き出していった結果、現在の人気キャラクターへと成長を遂げていったと語っている。また、爆豪は作者にとってものびのびと描けるお気に入りのキャラクターのようで、「爆破」の力を使って大暴れする姿を描くのは特に楽しいと明かしていた。
当初は子どもっぽさの残る乱暴な一面が目立つ爆豪だったが、ヒーローとしてはもちろん、より魅力溢れる人物へと成長、変貌していったということだろう。
多くの読者を惹きつける漫画のキャラクターは数多く存在するが、なかには作者の予想に反するほどの絶大な人気を獲得したことで、予想外のポジションへとおさまったキャラもいる。
魅力的なメインヒロインとして、敵から唯一無二のライバルへ、いじめっ子から共に歩むヒーローへ……いずれのキャラクターも各作品にとってなくてはならない重要な存在へと成長している。
キャラクターが勝手に動き出す……とはよくいうものだが、作者の想像を超える大躍進を見せる様も、漫画作品の醍醐味の一つと言えるのかもしれない。