■実は超有名な潜水艦の搭乗員だった!『崖の上のポニョ』

 2008年に公開された『崖の上のポニョ』は、童話『人魚姫』を彷彿とさせるストーリーで、可愛らしい男の子・宗介と、さかなの子・ポニョの奇跡的な出会いから始まる大冒険を描いた見応えのある作品だ。

 ポニョは、元人間の父・フジモトと、海の女神である母・グランマンマーレから生まれた子どもだ。

 実はこの元人間のフジモトについて、実は驚きの事実が判明している。『金曜ロードショー』の公式Xは「フジモトは、ジュール・ヴェルヌのSF小説『海底二万マイル』に登場する潜水艦・ノーチラス号の唯一のアジア人」であったと投稿しているのだ。

 この設定は映画のパンフレットにも記載されており、関連書籍『THE ART OF 崖の上のポニョ』(徳間書店)で美術監督を務めた吉田昇氏も、「宮崎監督の設定では、フジモトは『海底2万マイル』のネモ船長の弟子らしいんです」と明かしている。

 さらに吉田氏は「100年以上も生きていて、ひとりでコツコツとサンゴ塔を改造して研究室にしたんですね」と明かしている。設定によると、フジモトはノーチラス号に搭乗していた少年時代にグランマンマーレと出会い恋に落ち、その後は海の眷属として生きる魔法使いになったのだ。

 それにしても魔法使いとはいえ、100年以上も生きているという壮大な設定には驚かされてしまう。

 ちなみに、原作小説『海底二万マイル』には、ノーチラス号にアジア人が搭乗していたという明確な記載はないため、そのため、フジモトがネモ船長の弟子であるという設定は、宮﨑監督オリジナルのものだと考えられる。

 誰もが知る潜水艦の搭乗員だったというロマンチックな裏設定を創り上げるなんて、さすが宮﨑監督だと思わず唸らされる。

 

 制作過程における紆余曲折を経て、当初の構想から変更が加えられ、今ある形へと結実したスタジオジブリの名作たち。今回ご紹介したトリビアを知ることで、作品をより深く、新たな視点から楽しむことができるだろう。

 これらのトリビアを思い返しながら、あらためて作品を見てみてはいかがだろうか。

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