
松本零士さんの不朽の名作『銀河鉄道999』には、地球の常識では考えられないほど過酷な環境の星がたびたび登場する。
家が丸ごと吹き飛んでしまうような台風が頻繁に起きる星や、お酒を飲まないと生きていけない星など、絶対に住みたくないと思ってしまう星も多い。主人公の少年・星野鉄郎と、彼に寄り添う謎の美女・メーテルは、そうした星に降り立つたび、命からがら逃げ出している。
そこでここでは、地球では考えられないほどの環境にある「過酷すぎる星」を紹介したい。その星に住んでいる住人たちは、どんな暮らしをしているのだろうか。
※本記事には各作品の内容を含みます
■すべてが吹き飛ぶ「突発性台風」が日常「これからの星」
エピソード「これからの星」では、天災によってすべてが破壊されることが日常となっている恐ろしい星の姿が描かれている。
同名の星に到着した999号。古いホテルに宿泊した鉄郎とメーテルは、そこで奈美という娘と、その父親から豪快にもてなしを受ける。しかし「突発性台風」という暴風に巻き込まれ、ホテルは跡形もなく全壊。二人は999号の乗車パスをはじめ、すべての荷物を失ってしまう。
パスを失くした二人は行く当てもなく、駅で途方に暮れていた。しかしこの星の人たちは鉄郎たちに食べ物を差し入れて励まし、さらにパスや荷物は奈美と父親含め、町内総出で探して鉄郎たちのもとに届けてくれるのであった。
この星の住居はしょっちゅう台風が起きるせいか見渡す限りボロ家ばかりで、誰もゆとりのある生活を送っているとは思えない。そんな極限状態であっても奈美は「吹っとんだ家くらい父さんと力をあわせてまた建て直すわ、平気平気」と、前向きだ。
この星の住人はみな、人の持っている物をうらやましいとは思わず、自分の力で努力して手に入れるという。それを信念に、これまで草も木もない荒野の星をみんなで開拓してきたのである。
狭い範囲でしょっちゅう起こる突発性台風は厄介だが、この前向きでたくましい生き方は地球人も学ぶべきところがあるだろう。
■お葬式のために誰かを殺す!?「霧の葬送惑星」
「霧の葬送惑星」は、毎日お葬式がおこなわれている薄気味悪い星のエピソードだ。
「葬送惑星」という星に降り立った鉄郎とメーテルは、黒装束に身を包んだ住人たちに襲われ、生きたまま棺桶に閉じ込められてしまう。なんとこの星の住人たちは、“お葬式の悲しいムード”が好きなゆえ、それを楽しむために人を次々に殺してはお葬式をあげるという、おぞましい風習を持っていた。
鉄郎とメーテルが気絶させられた際、住人は「年若い少年と、美しい女の人…」「こんな悲しいお葬式ってのはめったにないわ」と、涙を流す。しかしその一方で「とてもいいお葬式になるわね」と、嬉しそうな様子も見せている。
通常、誰かが死ぬのは悲しいことだが、この星の人々は毎日お葬式をすることで生きる活力を見出しているのだろう。その後、辛くもその場を脱出できた鉄郎とメーテルだったが、誰かの娯楽のために殺されるなんて本当にまっぴらである。