■太りすぎて家が爆発…怠惰を極めた「なまけものの鏡」

 「なまけものの鏡」は、体を動かさなくなった人間が肥大化して家を壊してしまう衝撃的なエピソードだ。

 同名の星で下車した鉄郎は人で町を探索する。やがて一軒の家を訪ねてドアを開けてみると、“ブヨブヨの何か”に弾き飛ばされてしまう。なんとそれは住人の肥大化したヒザであった。この星の住人は機械に任せて自分の足で動かなくなってしまった結果、みな肥大化してしまっていたのだ。

 さらにあろうことか太り過ぎた住人が身をよじっただけで、近隣の家をも巻き込んで爆発が起こる。このようにこの星では家がしょっちゅう爆発するが、それも日常茶飯事のようで、脳波で家を要求すると機械が自動的に家を再建してくれるという。

 太りすぎて家が爆発するなんて異常事態だが、住人同士は「いちだんとお太りになりましたなあ」「でもいちだんといいおつやのお肌におなりあそばして…」と笑いあい、まったく問題視していない。

 その後、飛び立つ999号で鉄郎は、“何もかも機械にやらせてすることがなくなると、人間はああなってしまうのか”と呟いていた。意外にも住人は幸せそうだが、やはりここまで肥大化したくはないものだ。

■酒がなければ生きられない…たった一人の男が支配する世界「サケザン大陸」

 「サケザン大陸」は、文明のないジャングルの同名星で飲み水はなく、その代わりに酒を飲まなければ生きていけないという環境の星である。この星は、大酒飲みのサケザンという男と、その取り巻きである10万匹ものサルが支配していた。

 星に降りた鉄郎とメーテルだが、メーテルはサケザンにさらわれてしまう。その後、メーテルを助けようとした鉄郎も牢屋に閉じこめられてしまうが、同じくサケザンに捕まっていたライザという女性に救われ、彼女とともに999号へ逃げるのであった。

 サケザンが支配するこの星では法はまったく通用せず、力こそがすべてだ。

 救いがあるとすれば、サケザンはサルたちに愛情を持っており、単なる“独裁者”ではないところだろう。サケザンは最終的に鉄郎を強い男だと認め、メーテルも解放する紳士的なところも持っている。そんな彼の優しさを目の当たりにしてか、ライザも自らサケザンのもとに帰っていた。

 サケザンは最後に“機械の体をもらいにいくのなんかやめて、酒を飲んで自然の中でサルと暮らさないか”と、鉄郎へ伝言を残しているが、それはこの星の過酷なルールに従って生きることを意味する。現代人にとっては、まさに究極の選択と言えるだろう。

 

 このように『銀河鉄道999』には、想像を超える過酷な環境の星が数多く登場する。これらのエピソードは、人間がいかに環境に適応できるかを示すと同時に、常識というものの危うさを私たちに突きつけてくる。

 私たちが暮らす地球も、温暖化などさまざまな問題を抱えている。もしも異星人が地球を訪れたなら、“よくそんな過酷な星で暮らしているな”と、驚かれるかもしれない。これ以上、地球が過酷な星にならないよう、私たち1人ひとりができることは何か考える必要があるだろう。

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