■中学生でマンガ家デビュー、投稿のきっかけは友達の言葉

―― 先生は13歳の頃、中学生でマンガ家デビューされています。マンガ家を目指したきっかけは何だったのでしょうか。

やぶうち: マンガっぽいものは小学生の頃から描き始めていたんですけど、投稿したのは中1が初めてです。それまで、投稿制度があることすら知らなかったんですね。中1のときに友達が「マンガスクールみたいなのがあるから、投稿してみたら?」って勧めてくれたのが最初のきっかけです。

―― マンガ家に「なりたい」と思っていたわけではなかったのでしょうか?

やぶうち: 投稿した当初は、なりたいとは思ってなかったです。最初は「自分の作品ってどの程度なんだろう?」っていう、半分興味本位で出してみた感じで。ただ、高校生になったら編集部に持ち込みしてみようかな、とは思っていましたね。

―― では、デビューが決まった時はいかがでしたか。

やぶうち: 「嘘でしょ」って。夢じゃないかなってずっと思っていました。自分の作品が実際に雑誌に載るまで信じられなかったです。

―― その後、学生生活の傍ら、プロのマンガ家としてコンスタントに作品を発表されています。大学に通いながら執筆されていた時期は、両立が大変だったと伺いました。

やぶうち: 大学の授業、ほぼ行ってなかったんです(笑)。そもそも上京したかったんですよね。今はリモートでいろいろできますけど、当時はやっぱり東京の編集部に近い場所に住んでいるほうが有利だったので。

 上京の条件として、親から「東京の大学に行くなら」と言われて、マンガのために大学に行ったんです。マンガがうまくいったら大学を辞めてもいいよ、という親との約束で頑張っていたんですけど、結局4年間大学には行ってしまいました(笑)。

―― 少女マンガのトレンドはこの40年で大きく変化したと思いますが、先生はどのように感じていますか?

やぶうち: 実はトレンドに本当に詳しくなくて。今すごくヒットしている作品も全然読んでないんですよ。私は常に邪道なものが好きで、読むのも描くのもそうなってしまっていますね。売れるためにはそういう王道の作品を描かないといけないなと思いつつ、描けないというのが苦労してきた点かもしれません。

―― でも、それこそが、やぶうち先生の魅力であり、ファンが惹かれる部分だと思います。作品の中で、恋愛や友情を描く上で大事にしていることは何ですか?

やぶうち: 会話や言葉遣いをなるべくリアルにすること、ですね。大学までは周りにリアルな会話があったんですけど、卒業してからは主にSNSとかを見ています。子供ができてからは子供たちとの会話から得られるものが大きいです。「詰んだ」とか「すんなし」とか、昔は言わなかった言葉だなぁなんて思ったりしますね。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5