鱗滝左近次、桑島慈悟郎、煉獄槇寿郎が伝えた覚悟と愛…『鬼滅の刃』鬼殺隊を導いた「元・柱の偉大な背中」の画像
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』第3弾キービジュアル (c)吾峠呼世晴/集英社 (c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 7月18日より公開された、映画『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』。吾峠呼世晴氏の漫画『鬼滅の刃』を原作とする本作は、公開3日間で観客動員384万人、興行収入55億2429万円という大躍進を続けており、大きな注目を集めている。

 本作には、人喰い鬼と命懸けで戦い続ける組織「鬼殺隊」、そしてその頂点に立つ剣士「柱」が登場する。

 鬼との戦いは熾烈を極め、卓越した剣技と不屈の精神を誇る彼らでさえも、任務の果てに命を落とすか、あるいは再起不能の深い傷を負って前線を退くことがある。だが、剣を置いた後もなお、後進の育成に尽力し、鬼殺隊を導き続けた者たちがいた。

 今回は、戦場を離れても鬼殺隊を支え続けた「元・柱」たちの偉大な背中を振り返る。

 

※本記事には作品の内容を含みます

 

■覚悟を叩き込んだ元・水柱「鱗滝左近次」

 天狗の面を被った元・水柱、鱗滝左近次。現・水柱の冨岡義勇をはじめ、錆兎や真菰など、多くの隊士を育て上げた「育手(そだて)」であり、前線を退いた後も陰から鬼殺隊を支え続ける人物だ。そして、彼は竈門炭治郎の師でもある。

 鱗滝が炭治郎に授けたのは、“水の呼吸”という剣技だけではない。彼が鬼殺隊士として「生きるため」、そして「死ぬため」の覚悟までも彼に教えた。

 それは炭治郎が鬼殺隊に入る前のこと。鬼にとどめを刺せぬまま夜明けを迎えてしまった彼に対し、鱗滝は問いかけた。

 「妹が人を喰った時、お前はどうする?」

 この問いに即答できぬ炭治郎の頬を打ち、「判断が遅い」と一喝。さらに容赦なく言い放つ。

 「妹が人を喰った時、やることは二つ 妹を殺す お前は腹を切って死ぬ」と。

 鱗滝は修行に入る前、“鬼になった妹を連れて行く”という選択がいかに重いものであるか、その覚悟を、まずは叩き込んだのである。

 そして、この覚悟は炭治郎だけに向けられたものではなかった。後の柱合会議で読み上げられた鱗滝の手紙には、「もしも禰󠄀豆子が人に襲いかかった場合は 竈門炭治郎及び──…鱗滝左近次 冨岡義勇が腹を切ってお詫び致します」と、記されていた。

 炭治郎が鬼になった妹・禰󠄀豆子を連れ戦うという前代未聞の選択には、兄弟子である義勇と鱗滝自身の命も懸けられていたのだ。

 水の呼吸とともに託されたのは隊士としての覚悟。その教えがあったからこそ、炭治郎は妹と共に、鬼との戦いを貫くことができたのだろう。

■見限らない愛で鍛えた元・鳴柱「桑島慈悟郎」

 鬼との戦いで片足を失い、前線を退いた元・鳴柱、桑島慈悟郎。鱗滝と同様「育手」として後進の育成に生涯を捧げた。

 その弟子の一人が我妻善逸である。借金の肩代わりをしてまで弟子に迎え入れたが、当の善逸は泣き言を連発し、過酷な修行からは何度も脱走。捕まえては連れ戻す、その繰り返しの日々であった。

 それでも桑島は見限らなかった。逃げ出した善逸を何度でも捕まえ、修行へ引き戻し、「泣いていい 逃げてもいい ただ 諦めるな」と、叱咤激励を続けた。

 その厳しい口調の裏にあったのは、弟子への揺るぎない信頼と深い愛情である。善逸もまた、反発しながらも心の奥ではその想いを理解していたはずだ。親のいない彼にとって、桑島は生涯で初めて出会った“自分を見限らない存在”だった。それゆえ、善逸は彼を「爺ちゃん」と呼び、慕い続けた。

 そして、那田蜘蛛山での死闘の末、兄蜘蛛の首を斬り落とすも、毒に侵され倒れた善逸。意識が遠のく中で響いたのは、やはり師の「諦めるな!!」という声だった。

 その一喝が善逸の呼吸を促し、毒の進行を遅らせた。まさに命の瀬戸際で師の教えが善逸を支え、救ったのである。

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