■最後の最後まで謎

 このように最後の最後まで謎が多かった同作。最終話でも謎をほのめかされたキャラがいるのを覚えているファンも多いのではないだろうか。物語の後半で新たなノートの保有者「Xキラ」として夜神月の手足のように動いていた魅上照だ。

 彼は、Lの後継者である「ニア」を裏で殺そうと月のために動いていたキャラクターだが、その最期については「獄中死した」とだけ分かるのみで実は謎が多い。

 魅上は京都地検に勤める検事であり、幼い頃から正義感が強く、自身の正義を信じていじめなどに立ち向かいながら育ってきた。だがそんな折、偶然にも自分が「悪」だと思う人物が立て続けに亡くなることがあった。そして自身の「悪は削除されるべき」という思想を膨らませ、世間を騒がせていたキラを“神”として信仰していく。

 そんな歪んだ正義感を抱えたまま検事になった魅上は、月に見込まれ「Xキラ」として新たなノートを保有し活動を開始。そして最終決戦時、ニアたち全員を殺す作戦を実行するため、ひそかに現場に呼ばれることになる。

 隙から対決現場を覗かせ、ノートに月以外の全員の名を書かせるという作戦。ただ、これが単純なものではなく、ニアはすでにこの作戦を読んでいた。そのため、あらかじめ「ノートを偽物にすり替える」という工作を働いていたのだが……ここで月とニアによる推理合戦が行われる。互いが「ノートをすり替える」ことをすでに予想し合っていたのだ。

 月はそのため、事前にニアに偽物のノートをすり替えさせるため、そこまであえて魅上に偽物のノートで行動させ、当日の現場にこそ本物のノートを持ち込ませていたのだ。

 だがそこまでがニアの予想の範囲内で、魅上のノートはすり替えられていた。結果、魅上は偽物のノートに名前を書いただけで誰一人死ぬことはなく、最終的に月が全員に糾弾され命を落とすことになる。

 実は魅上は、この最終決戦の少し前、警察に見張られて動けない月を心配し、一度だけ本物のノートを保管庫から取り出し使用していたのだ。これが「すり替え」を成功させ、“神”のためにというその行動が、結果として月の敗北を招いてしまった。

 月はその場で死神・リュークに心臓を止められ、主人公が死ぬという『ジャンプ』でも類を見ない形で物語は幕を閉じるが、最終話で魅上のその後が少しだけ語られる。

 ただ、「魅上の謎」はその先。それは、最終決戦のその後、ニアの前で敗北した月の情けない姿を見て魅上が絶望し、逮捕された10日後に獄中死をしているということ。

 捜査本部の松田はその最終話で独自の推理を披露している。松田によると、ニアが魅上の名前と死の直前の行動をデスノートに書き、彼を殺したのではないかという。つまり「魅上が自分で命を絶つように」ノートに書いたという推察だ。だが、結局はその推察の先が語られることはなく、主人公死亡の直接の原因を作った魅上の最期の真相はうやむやのままとなった。

 確かに、魅上を殺した人がいるとしたらニア以外は考えられない。それに、潔癖で几帳面な性格の魅上が、ニアにノートをすり替えられていることを疑いもしなかったのはいささか不自然だ。

 よって、「ノートのすり替えを疑わない」と、死の直前の行動すら操ったのではないかと睨んだというわけだ。……と、このように、月が死んでもなお関係者たちの推理が続いていき、読者の頭を揺さぶり続けた。

 松田といえば、『DEATH NOTE』の中でもかなり読者目線のキャラクターである。その彼にこういった証拠不十分ではあるが可能性がゼロではない推理をさせることは、読者の姿を反映したようにも思えてしまう。

 作者は上記の未回収の謎いずれについても、その真意について明らかにしていない。だからこそ考察の余地が生まれるのであり、『DEATH NOTE』の話題がたびたび盛り上がる理由だろう。

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