
『ウルトラマン』(1966年)によって幕を開けた日本の「変身ヒーローブーム」。その人気は『仮面ライダー』(1971年)の登場で、不動のものとなった。
その後、特撮ドラマの二大ヒーローとして君臨する両者に続き、昭和に生きた子どもたちを熱狂させた変身ヒーローは数知れない。
しかし、その中でもトップランナーとは言い難い、一歩引いた立ち位置にいた変身ヒーローの物語は、時に視聴者の度肝を抜く衝撃的な結末を迎えることが少なくなかった。ここでは、そんな昭和の特撮界で輝いたヒーローたちの伝説的な最終回を振り返ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■『人造人間キカイダー』これで終わり!? ラスボスの呆気ない最期
『仮面ライダー』の爆発的な人気を受け、同じく石ノ森章太郎さん原作で制作された『人造人間キカイダー』は、空前の変身ヒーローブームをさらに盛り上げた一作だ。
犯罪組織・ダークによって拉致された光明寺博士が、組織の野望を阻止すべく密かに造り上げた人造人間・ジロー。本作は、彼がダークより送り込まれる敵ロボットたちと激闘を繰り広げる姿を描いた物語だ。
彼には善の心を持つ「良心回路」が埋め込まれているのだが、それは不完全なものだった。善と悪の狭間で苦悩する人造人間の戦いを中心に描いたストーリーは、昨今加速するAI化のシンギュラリティを予見していたかのようなテーマ性、加えてキカイダー自身の左右非対称のデザイン、そして、悪の人造人間であるハカイダーの強烈なキャラクター性の高さも相まって、絶大な人気を博した。
そんな本作の最終話は「ジローの最期か ダーク全滅か!?」という、何とも気が気でないタイトルのもと、最後の戦いが描かれた。
ここでは、キカイダーに勝るとも劣らない強さを誇ったハカイダーを一瞬のうちに倒した白骨ムササビという怪人が登場する。相対するジローは、あろうことか自身が負けることを悟り、自らの命を投げ出そうとする。
“本当にキカイダーは負けてしまうのか……!?” そんな不安がよぎる中、光明寺博士とその子どもたちをはじめとした仲間たちの協力を得て、ジローは辛くも白骨ムササビに勝利する。
その勢いのまま、ダークの首領であるプロフェッサー・ギルとの戦いへとなだれ込むかと思いきや、追い詰められたギルは基地の自爆装置をあっさりと起動させ、なんと爆死してしまう。
ギル役を務めた安藤三男さんの目を見開いたまま死にゆく表情はあまりにも恐ろしかったが、ラスボスのあまりに唐突な最期に、思わずあっけに取られてしまった視聴者は少なくなかっただろう。
■『アクマイザー3』バッドエンド!? 主人公たちの衝撃的なラスト
前述した『人造人間キカイダー』は『仮面ライダー』の影響を受けて制作されたが、『アクマイザー3』(1975年)は同年放送された『秘密戦隊ゴレンジャー』の大ヒットを受けて作られた、チームヒーローだ。
地底世界「ダウンワールド」で暮らすアクマ族が地上へと侵攻したことから、人間とアクマ族の混血であるザビタン、アクマ族を裏切ったイビル、ガブラと共に「アクマイザー3」を結成し、熾烈な戦いに身を投じていく物語だ。
ヒーローというよりも怪人に近いフォルムが印象的であり、当初は変身せずにその姿のまま日常生活を送るなど革新的なアイデアがふんだんに盛り込まれていた本作。だが、物語が進むにつれて人間態も登場、さらにコメディ要素も強まるなど、マイナーチェンジを重ねた作品でもある。
そんな本作の最終話「なぜだ?! 明日へのカプセル!」に登場する悪役は、アクマ族総師団長・ゲベルだ。実はアクマ族には謎の支配者である大魔王ガルバーという存在がいるのだが、登場シーンは声のみとなっており、このゲベルが本作史上最強の敵キャラとして君臨している。
ゲベルが持つ「不滅の盾」と呼ばれる凄まじい武器を破るためには、自らを犠牲にしなければならない。アクマイザー3はその身を賭して戦いに挑み、最終的にはゲベルを倒すことに成功。
しかし、彼らを待っていたのは悲劇的な結末だった。大魔王ガルバーの呪いを受け、3人の魂は小さなカプセルの中に封じ込められてしまうのだ。
そして「再びアクマイザー3が帰ることはない」という非情なナレーションと共に物語は終わってしまう。子どもたちの心に深い傷跡を残したバッドエンドとして語り継がれる、衝撃的な最終回であった。