■鏡の中の自分と入れ替わる恐怖!妖怪うつしみ
最後は、鏡の自分と現実の自分が入れ替わる恐怖を描いた第7話「鏡に盗まれた魂!!うつしみ」を振り返りたい。
物語は、雨の降る夜に校内を巡回していた用務員が、鏡に映った自分に話しかけられて吸い込まれるところから始まる。これは自称「校内一の心霊研究家」であるレオが集めた“うつしみ”という怪談の話だ。
しかし、レオが帰宅すると母親の様子がどこかおかしい。どうやら本当にうつしみが霊眠から目覚め、暴れだしたようである。レオは必死にさつきに助けを求めるも母親に鏡越しに襲われ、表情のない亡霊のような姿になってしまう。
以降うつしみの被害は急激に広がり、街の人々や敬一郎までもが鏡に吸い込まれて乗っ取られていく。この鏡の人々はのっぺらぼうで、目が描かれたメガネをかけているのだが、この顔がまた気持ち悪さを増幅している。
終盤には、ついに街に残った人間がさつきとハジメだけになってしまう。もはやゾンビの襲来にあったような勢いである。だが、カーヤの持ってきたおばけ日記を見て「合わせ鏡」が霊眠方法だと突き止めると、コンパクトの手鏡を使って閉じ込められた人々を解放するのだった。
鏡の住民たちの歪んだ顔が薄気味悪かったうつしみの物語。最後にカーヤが言った「もしすでに全てが反対になっていたら……」という言葉もまた、嫌な余韻を残すものである。
筆者の小学校でも「見ると吸い込まれて出られなくなる」と噂の鏡があったのだが、やはり子どもたちはそこを通るたびに怯えたものだった。“成り替わり”という設定は、ちょっとリアリティがあるからこそ面白いのだろう。
大人になってから聞くと怖さを感じない学校にまつわる怪談話も、毎日通う子どもたちにとっては怖くてたまらないもの。ババサレを見れば留守番が怖くなり、うつしみを見れば鏡が怖くなっていたという人は多いだろう。
あの頃、放課後の教室や暗い廊下、ひとりきりの帰り道が妙に怖く感じられたのは、『学校の怪談』のせいだったかもしれない。当時の記憶とともに、もう一度あの恐怖を味わってみてはいかがだろうか。