“透明海のアルテミス”や“わが青春の銀河鉄道”も…『銀河鉄道999』読者が思わず涙した切なすぎるエピソードの画像
『さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅』4Kリマスター版(C)松本零士・東映アニメーション (C)東映アニメーション

 1977年から松本零士さんにより連載が開始された、壮大なSF漫画『銀河鉄道999』。本作に対し思い入れを持つ読者は多く、SF漫画における金字塔として不動の地位を築いている。

 『銀河鉄道999』の人気の理由はさまざまだが、数あるエピソードの中には思わず涙してしまうような話も多い。連載から長い年月を経た令和の今、読み返しても、その感動は少しも色褪せることがないのだ。

 今回は『銀河鉄道999』に登場するエピソードの中から、思わず泣けてしまう物語を振り返っていきたい。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■母を想う気持ちに胸が締め付けられる「透明海のアルテミス」

 「透明海のアルテミス」は、余命わずかな娘と、その母親である巨大な惑星との悲しい別れを描いた物語だ。

 あるとき999号は、突如現れた海のような惑星と衝突し、その中に沈んでしまう。鉄道警備局は惑星を震動波で破壊することを決定するが、その惑星は多くの生命を生み出す“母なる星”だった。

 星の破壊に抵抗する主人公・星野鉄郎だったが、その矢先、一隻の宇宙船が惑星に着陸し、透明な体のアルテミスという女性が傷つきながら降りてくる。瀕死の彼女は死に場所として、自分を産んでくれた“お母さん”である惑星に戻ってきたのだ。

 そしてアルテミスは「私が死んだら星の地面の上に降ろして……」と鉄郎に告げ、静かに息を引き取った。

 大人の女性であるアルテミスが、死ぬ間際に“私のお母さん…柔らかくて…あたたかくて…やさしい…お母さん…”と口にし、最期まで母親の愛情を求める姿は胸に迫るものがある。そして、アルテミスの最期を受け入れた母なる惑星もまた、鉄郎を自分の子どものように受け入れ、自ら震動波を受けて消滅していくのであった。

 このエピソードで描かれるのは、母親を最期まで想い続ける娘の気持ちと、子どもを深く愛する母の強い愛情だ。すでに母親を亡くしていた鉄郎は、アルテミスと母なる星の切ない関係を目の当たりにして涙を流す。

 窓の外を見ながら亡くなった母親を思い出し、「人と死に別れるって悲しいね…」と呟く鉄郎の姿にも強く心を揺さぶられてしまう印象的な悲しいエピソードであった。

■ペットを飼ったことがある人なら泣いてしまう…「ミーくんの命の館」

 「ミーくんの命の館」は、亡くなったペットたちの“その後”が描かれているエピソードだ。

 同名の惑星に降りた鉄郎とメーテル。ホテルに滞在中、鉄郎は部屋からメーテルが消えていることに気づく。窓の外を見ると、メーテルはトラやヘビなど、巨大な動物たちに囲まれていた。

 危険を察知した鉄郎はメーテルを助けようと銃を構えるが、999号に乗り合わせていた美しい女性がそれを制する。彼女は自分のことを「ミーくん」と名乗り、かつて人間に飼われていた猫であったことを明かす。この星でミーくんは飼い主と死に別れた動物たちを優しく迎え入れ、主人を思い出して悲しく鳴くペットたちを守っていたのだった。

 普段は汽笛を鳴らして駅を発着する999号も、この「ミーくんの命の館」では音を立てず、動物たちを驚かさないよう配慮しているという。「こんな星があると思えば、ネコや犬と死に別れてもいくらか心がやすまるよなあ」と涙ぐむ鉄郎の言葉通り、この星はペットを飼う人にとって希望の星といえるだろう。

  1. 1
  2. 2
  3. 3