■改めて見直したい、映画鑑賞における基本的なマナー10選

 楽しみにしていた映画を、なるべく良い環境で見たいというのはファンなら誰でも望むことだろう。こういった状況を、業界関係者はどう見ているのだろうか。映画館でのマナー向上の啓蒙活動を行う全国興行生活衛生同業組合連合会(以下、全興連)はこのように話す。

「特に幼児や小学生も対象となっている映画だと、現場でいろいろな声が出るのは想定している部分でもあります。観客それぞれにルールを課すのは難しく、保護者の方に絞って、団体として一律に定めているガイドラインはありません。マナーは人それぞれ基準が違う場合もあり、組合として線引きするのはなかなか難しい。啓蒙活動は続けつつ、興行会社ごと、レーベルごと、もしくは現場(劇場)ごとに個々で対応するのが基本的な流れだと思います」

 マナーというのはあくまで快適な鑑賞を心がけるために守ってほしいことであり、強制力がない。そのため、観客の対処を映画館にすべて任せるのは酷な話でもある。劇場側の取り組みだけでなく、観客一人ひとりが「公共の場で鑑賞している」という意識を持ち、ふるまいを見つめ直すことが何より大切だ。

 最後に今一度、映画館における基本的な鑑賞マナーをおさらいしてみたい。全興連が映画鑑賞において守ってほしいマナーとしてHP内でも掲げているのは、以下の10項目だ。

1:上映中は携帯電話の電源をオフにする
2:劇場内での録音・撮影機器の使用は禁止
3:劇場内での喫煙禁止
4:上映中のおしゃべりは禁止
5:劇場売店以外の飲食物の持ち込み禁止
6:ゴミは分別して処理する
7:上映開始に遅れないよう来場する
8:前の座席を押すなどの迷惑行為の禁止
9:23時を過ぎる上映には18歳未満は入場不可(地域条例により異なる)
10:割引が適用されるチケット購入の場合は、顔写真入りの学生証・身分証明を提示する

 例えば〈1:上映中は携帯電話の電源をオフにする〉という項目だが、バイブ音や画面の光は、周囲の集中を途切れさせてしまう大きな要因となる。また〈7:上映開始に遅れないよう来場する〉という項目も、遅れて入ってくる人の動きがスクリーン前を横切ることで、没入感が削がれてしまう恐れがある。映画館でもアナウンスがあるが、ぜひ劇場に赴く前にチェックしてほしいところ。

 また、TOHOシネマズの「ベイビークラブシアター」や、ユナイテッド・シネマの「抱っこdeシネマ」など、劇場によっては赤ちゃん連れの家族を対象とした専用上映も定期的に開催されている。どうしても子どもを連れての鑑賞に不安がある場合は活用するのもひとつの手段だろう。

 マナーは一律のルール化が難しい以上、「守らされるもの」ではなく、「お互いに気持ちよく過ごすための心がけ」である。各々が周りを気遣うことで、快適な鑑賞環境につながっていくはずだ。

  1. 1
  2. 2
  3. 3