
『スターオーシャン』シリーズでおなじみのゲーム開発会社「トライエース」のもうひとつの代表作に『ヴァルキリープロファイル』がある。今から約25年前の1999年12月、プレイステーション用ゲームソフトとして、第1作目の『ヴァルキリープロファイル』(エニックス)が発売された。
その後、続編シリーズも多数生まれたが、とくに初代『ヴァルキリープロファイル』は多くのファンから支持されている。陰鬱ながらも心に刺さるストーリー、個性が際立つキャラクター、画期的なバトルシステムなど、いまだに色あせない魅力にあふれていた。
とんでもない難易度の高さやPS版のフリーズの多さといった難点もあったが、それでもファンから愛された『ヴァルキリープロファイル』。同作が“トライエースの最高傑作”とも称される理由について、あらためて振り返っていきたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■キャラの死から始まる…重くショッキングなストーリー展開
『ヴァルキリープロファイル』は北欧神話がベースとなっている。主人公は半神半人の女神ヴァルキリー(レナス・ヴァルキュリア)で、神々の戦いにおける尖兵として戦わせるため、命を落とした人間の英雄たちの魂を集めることになる。
つまりヴァルキリーが担う魂の選別は、人間界の英雄たちの「死」が前提になっている。命が尽きようとしている英雄たちの死に様を見届けることになるため、そのストーリーは常に重苦しい。
特に筆者の印象に残っているのは、倭国という日本風の島国出身の「那々美(ななみ)」のストーリーだ。由緒正しき神社の養女である那々美は、正統な後継者だった実子の美那代が命を落としたため、神社の跡取りとして力を受け継ぐ儀式に挑む。
「美那代のためにも」と那々美は儀式に臨むのだが失敗。だが、実は儀式が失敗した要因は、亡霊となった美那代の嫉妬心によるものだった。
亡き美那代の気持ちを知ってしまった那々美は、自分の体を美那代に譲り、命を落とすのである。
美那代はどんな気持ちでその後の人生を歩んでいくのか、そして両親がこの事実に気づくことはあるのか……。その後のストーリーが非常に気になる、印象深いエピソードである。
■自力でのベストエンド到達は不可能? 最高難度を誇るマルチエンディング
『ヴァルキリープロファイル』には複数のエンディングルートが用意されており、マルチエンディング形式のゲームとなっている。全部で3種類のエンディングがあり、普通にプレイするとほぼ確実にノーマルエンドを迎えるはず。
ベストエンドとされるAエンディングに到達するには、ゲーム中の案内に反する行動をあえて選ぶ必要があり、そのうえで細かい条件も多数存在した。そのため攻略本なしでの自力攻略はほぼ不可能だと思われ、実際筆者も自力でのベストエンドクリアはできなかった。
たとえば、同作の特徴でもある「神界転送システム」。具体的な説明は避けるが、ベストエンドを迎えるためには、ある有能なキャラを神界転送しなくてはならない。
しかし神界に転送するということは、ゲーム中のパーティから半永続的に外れることを意味する。戦闘において優秀なキャラであればあるほどプレイヤーは神界転送しないため、必然的にベストエンドの発生条件が成立しにくくなるのだ。
ほかにもゲームの進行には直接影響がない「封印値」というパラメータもネックになる。封印値はレナスの記憶を奪う封印の強さを示す値であり、この数値が下がるとレナスが記憶を取り戻す。
しかし「封印値」を下げようとすると、今度は神族の長であるオーディンからの「評価値」が下がってしまい、バッドエンドに近づいてしまうのだ。要するにベストエンドを迎えるには、封印値と評価値の数値を絶妙なあんばいに調整する必要があり、それをノーヒントで成し遂げるのは至難の業だった。