■うってかわってシューティングゲームに…シリーズで異質な存在!?

 “銀箱”のなかでも、『ドンキーコング3』がとくに珍しいのはなぜなのか。値上げの直前に初版が発売されていることをはじめ、いくつかの理由があると思われます。

 これは私の見解なのですが、『ドンキーコング3』って、元祖『ドンキーコング』や、その続編『ドンキーコングJR.』とのつながりが、いろんな意味で断ち切れている感じがするんですよね。

 1作目では、敵役のドンキーコングがさらった美女を、のちにマリオと呼ばれる主人公が助ける内容だったのが、2作目では立場が逆転。今度はマリオが檻に閉じ込めたドンキーコングをジュニアが救いに行くという内容です。この、ストーリーにつながりのある展開が私はすごく好きだったんですよね。

 ところが、『ドンキーコング3』は、植物園で殺虫剤を噴射してドンキーコングや虫を退治するゲームで、主人公も違う。なので、前作とのつながりがまるで感じられませんでした。

 ゲーム性にしても、1作目と2作目はジャンプやツタで上を目指すアクションゲームだったのが、3作目はシューティングゲームになっています。だから、『ドンキーコング3』だけがどこか異質な存在に映るんですよね。もちろん悪いゲームというわけではないんですが、きっと当時のゲームファンも同じような受け取り方をしていたんじゃないでしょうか。

 そもそも『ドンキーコング』はアーケードゲームで、私も中学生のときにゲームセンターでよく遊びました。今思えば、色が違っていたので『クレイジーコング(※)』だったんでしょうけど(笑)。(※もともとは任天堂から許諾を得て作られた『ドンキーコング』のクローン版。のちに契約違反が認められ裁判となった)

 それが家で遊べるというのが、ファミコンの大きな魅力でした。アーケードでは縦画面なのが横画面になっていたり、2面が省略されているのはわかっていたんですけど、それでも当時の私にはゲームセンターとまったく同じものに見えるくらい、デキがよかったんですよ。『ドンキーコングJR.』もやはりゲームセンターで遊んでいたので、ファミコンへの移植はうれしかったですね。

 でも、『ドンキーコング3』は、アーケード版の記憶がほとんどない。だから、ゲームセンターのゲームが家で遊べるっていううれしさは、あまりなかったですね。もし、ゲームセンターに前作ほど置かれていなかったのなら、ファミコン版も前作ほどは売れなかったんじゃないでしょうか。だとすれば、再販版はなおさらでしょうし、それが「貴重さ」につながっているのかもしれません。

■元ネタはアーケード版より前に発売された『ゲーム&ウオッチ』!?

 ……と、『ドンキーコング』は好きなタイトルなので、いくらでも話ができちゃうんですけど、いつか『ゲーム&ウオッチ』版の話もしたいですね(笑)。

 そうそう、『ゲーム&ウオッチ』といえば、“マルチスクリーン”で発売された『グリーンハウス』というゲームをご存じですか?

 植物園で殺虫剤をまいて虫を退治するという内容で……そう、『ドンキーコング3』みたいなゲームなんです。しかも、ゲームに登場する主人公や虫も、『ドンキーコング3』に出てくるキャラと似ているような……。

 『ドンキーコング3』のアーケード版は1983年に出ているんですが、マルチスクリーンの『グリーンハウス』は1982年の発売。あくまで私の仮説ですが、『グリーンハウス』が『ドンキーコング3』の元ネタだったりしませんかね……? ちなみに『ゲーム&ウオッチ』各種も当店で扱っていまして、『グリーンハウス』は2万2000円(税込)となっています。


※ソフトの値段や状態などは取材時のものです。

【プロフィール】
大竹剛(おおたけ・つよし)
「レトロゲーム」に造詣が深い“元ドット絵職人”。ゲームメーカー「テクノスジャパン」で、主に『くにおくん』シリーズにドッターとして参加。現在は「ハードオフTOKYOラボ吉祥寺店」で店長を務める。本人もレトロなゲームのコレクター。

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