■貴公子の不幸な死が招いた壮絶な復讐劇

 ガルマ・ザビはジオン公国の支配者であるザビ家の末弟であり、地球方面軍司令を務めていた人物。占領地であるニューヤークの前市長の娘イセリナ・エッシェンバッハと恋仲になり、結婚を誓い合う仲だった。

 ジオンを嫌うイセリナの父に結婚を認めさせるため、ガルマはホワイトベース撃破の戦果を狙っていた。しかし、友人だと信じていたシャア・アズナブルに裏切られ、そのホワイトベースとの戦いで生命を落とすことになる。

 ガルマの戦死を知ったイセリナは、ガルマの部下たちによる弔い合戦に参加。ガウ攻撃空母のみでホワイトベース隊に挑むという無謀な攻撃を敢行する。

 ガウを操縦するガルマの部下がケガをすると、イセリナは自ら操縦を担い、ガルマの仇であるガンダムに体当たり攻撃をしかけた。

 両機は激しく衝突し、ガウは不時着。ガンダムも故障して動けなくなると、アムロは機体の様子を見るために外に出た。ガウの機体上からアムロに銃口を向けるイセリナは、発砲直前に足を滑らせ、ガウの上から転落死した。

 アムロを「仇」と呼び、銃を向けながら死んでいったイセリナ。名前も知らない女性から仇と呼ばれたアムロにとっても、トラウマになるほどの壮絶な最期だった。

 彼女と一緒になるためなら軍を抜けてもいいとまで語ったガルマの言葉は、おそらく本気だったのだろう。『ジークアクス』の世界でガルマは早々に軍を抜けており、一年戦争を生き延びたと思われる。もしかするとザビ家も捨て、イセリナと幸せになったのかもしれない。


 『機動戦士ガンダム』は戦争をテーマにした作品だけに、成就しなかった悲恋は多い。ほかのシリーズにもいくつもの悲しい別れが描かれているが、もっとも印象に残っているのはどんなカップルだろうか。

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