■波音に消える悲恋の行方『目撃者にさようなら』
『目撃者にさようなら』は、1986年小学館フラワーコミックスの同名コミック『篠原千絵傑作集2』に掲載された作品だ。
高校生の鈴木遼子は定期を落としたのをきっかけに、卑劣な手で教師の上村正から乱暴されそうになり、彼を殺してしまう。その場から震えて逃げる遼子だったが、その様子をフリーカメラマンの斉木拓也に目撃されてしまう。遼子は自分の罪を隠すために、斉木も殺そうと決意するのであった。
教師を殺した罪を隠すため、目撃者でもある斉木を殺す覚悟を決めた遼子。しかし斉木は優しく紳士的な男性であり、彼を殺すはずが、遼子はだんだん彼に惹かれていく。やがて2人は両想いとなり、篠原さんの漫画ではお馴染みの、男女のドキドキする展開も描かれている。
このまま幸せな2人であってほしいのに、殺人事件が絡んでいるためそう簡単にはいかない。しかも最後はあっと驚く展開になっており、ラストシーンでは、思わず「そんな……!」とつぶやいてしまうほど切ない展開が待ち受けているのだ。
断崖絶壁に寄せる波の音とともに響く遼子の叫び声が悲しい。波音に消えゆく彼女の恋の行方にも注目してほしい作品だ。
篠原さんはこのほかにも多くの短編を発表しており、最後は胸がちょっと苦しくなるような切ない作品が多い。しかし一度読み始めたら止まらなくなる、そんな魅力に満ちた作品ばかりである。
篠原さんの短編作品の多くはウェブコミックで気軽に読めるので、久しぶりに読む人も、初めて読む人にも、ぜひ手に取ってほしい。


