
子どもにも大人にも愛される国民的アニメ『クレヨンしんちゃん』。現在『映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ』が公開中で、家族や友だちと一緒に映画館に足を運ぶ予定の人も多いだろう。
そんな『クレヨンしんちゃん』といえば、主人公・しんちゃんが繰り広げるドタバタな日常が主だが、実はたまに「ホラー回」が放送されることもある。普段とはまるで違う不穏な雰囲気のエピソードは、多くの視聴者の心に爪痕を残してきた……。
※本記事には作品の内容を含みます
■不穏なラストも印象的…「恐怖の幼稚園だゾ」
「クレヨンホラー劇場」と冠された「恐怖の幼稚園だゾ」は、数あるホラー回の中でも特に怖いと評価されているエピソードだ。
ある朝、いつも通り幼稚園バスに乗り込んだ風間くんは、担任のよしなが先生ではなくまつざか先生がいることに戸惑いを見せる。聞けば、よしなが先生はお祭りの準備で忙しいため、代理でまつざか先生がお迎えに来たという。
それだけであれば別におかしな話でもないが、登園するとふたば幼稚園は静まり返っており、妙な雰囲気が漂っていた。ここで流れる不穏なBGMも恐怖感を煽ってくる。さらに、なぜか園にはバスに乗ってきた風間くん、しんちゃん、ネネちゃん、マサオくん、まつざか先生しかおらず、他のみんながどこかに消えてしまっていた。
園には本来存在しない「4番目の教室」が出現しており、一同はそこを調べることに。しかし、いざ部屋に入ってみると、ひとりでにドアが閉まったせいで閉じ込められ、マサオくん、ネネちゃんが順に姿を消す……。
おまけに次の瞬間、天井から石像と化した園児や先生が次々と逆さに突き出してくる。中には粉々に壊れてしまう者もいて、明らかに異様な光景に背筋が寒くなった。極めつけは、味方だと思っていたまつざか先生が「お前もみんなと一緒に…石膏にしてやろうかぁ!!」と風間くんに迫るシーンだ。その声は地を這うように低く、形相は鬼のようで、夢に出てきそうだった。
その後、うなされながら目を覚ます風間くんの姿が描かれ、「夢オチ」だと判明。……するのだが、風間くんの髪に石膏のようなものがついていたり、登園バスでよしなが先生ではなくまつざか先生がいたりと、まだ悪夢が終わっていないかのような描写がされている。
「ただの夢で良かったね」と安心しきれない、夢の世界から抜け出せていない可能性が残されたラストも、この回が視聴者の心に強い印象を残した理由のひとつだろう。
■ループから抜け出せない!?「帰れない風間くんだゾ」
夏の定番シリーズである「夏の都市伝説シリーズ」のうちのひとつ「帰れない風間くんだゾ」。怪しげな音楽をバックに園長先生が語り出す導入部分は、まるで『世にも奇妙な物語』のようだ。
タイトルの通り、この回では風間くんが遭遇した妙な出来事が描かれる。夏休み、英語塾のテストに失敗してしまい、意気消沈しつつ家に帰る風間くん。しかし「ただいま」と玄関に入ると、ママが「もう塾に行くの?」とおかしな質問をしてくる。
見ると時計は昼に家を出た時と同じ13時43分で、外に出ると夕焼け空は青空に戻っていた。戸惑いつつ塾に行き、さきほどとまったく同じ内容のテストを解き、再び家に戻る風間くんだが……ここでも再び、ループが発生してしまう。
さらに、ループを抜け出そうと試みる風間くんの前に、風間くんに瓜二つの怪しげな少年が姿を現す。彼が怪しげな笑みを浮かべて風間くんの家に入ると、ドアの向こうからは「おかえり、トオルちゃん」というママの声が……。後を追うようにドアを開けた風間くんを待ち受けていたのは、再度のループだった。
偽物の風間くんはどうやらもともとループする世界の住人らしく、同じことの繰り返しに飽き飽きとして風間くんに成り代わろうとしていた。そんな彼との壮絶な追いかけっこの末、風間くんはようやくループからの脱出に成功するが、偽物のほうもまだ諦めてはいない。
最後の「またいつかタイムループの扉を見つけて、今度こそ入れ替わってやるからな」という偽物の風間くんのセリフからすると、風間くんの受難はこれからも続くのかもしれない。
このエピソードは明るいBGMが使われていたり、しんちゃんとのコミカルなやりとりもあったりと、雰囲気はさほど怖くない。しかし、だからこそ、日常と地続きになっている感じがあり、妙なリアリティがあった。ある日、何の前触れもなく抜け出せないループにはまり込んだとしたら……想像するだけでぞっとしてしまう。