最凶同士が夢の対決…!読者が震えたジャンプ漫画「悪vs悪」屈指の名バトル の画像
テレビアニメ『BLEACH 千年血戦篇』キービジュアル ©久保帯人/集英社・テレビ東京・dentsu・ぴえろ

 『週刊少年ジャンプ』の歴史をひも解けば、数多くの名勝負が語り継がれている。その中でもひときわ異彩を放つのが、「悪vs悪」の構図だ。そこには勧善懲悪の図式はなく、あるのはただひたすらに“悪”が“悪”に牙を剥き、策略と研ぎ澄まされた戦闘哲学がぶつかり合う純度100%の「力」の応酬である。その姿はしばしば主人公に劣らぬカリスマと信念を持ち、圧倒的な存在感を放ってきた。

 今回はそんな「ジャンプ漫画」の中から、読者の心を震わせた“悪役同士”による屈指の名バトルを3つ厳選。策略と哲学が交錯する戦いの数々を振り返ってみたい。

※本記事は作品の内容を含みます。

■複雑すぎる戦略に読者も混乱!『HUNTER×HUNTER』ヒソカVSクロロ

 最初に挙げるのは、冨樫義博氏の『HUNTER×HUNTER』におけるヒソカvsクロロだ。物語の舞台は天空闘技場。プロハンターであり殺し屋でもあるヒソカと、幻影旅団のリーダー・クロロが一騎打ちを果たす激熱カードである。

 両者は以前から因縁を抱えており、クロロはヒソカが執着し続けていた相手でもある。それだけに、この戦いはファンの間でも長らく“約束された死闘”として待ち望まれていた。しかし、いざ蓋を開けてみると、練られた戦術、トリック、何層にも折り重なる伏線と、あまりの難解さに読者の理解が追いつかず、読者からは「5回読んでも何が起きているのか完全には分からない」という声も。

 「死ぬまでやろう」のクロロの一言で、デスマッチがスタート。クロロが使うのは、他人の念能力を盗み、自分の能力として使うことができる盗賊の極意(スキルハンター)に加えて、アンテナを刺した相手を携帯電話で命令通り動かせる「携帯する他人の運命(ブラックボイス)」、左手で触った物体のコピーが右手から出てくる能力「神の左手悪魔の右手(ギャラリーフェイク)」など合計6つ。天空闘技場という広大な戦場を自らの能力に適したフィールドへと作り変え、まるでチェスのように相手を追い詰めていく。

 一方のヒソカも作中序盤から登場する強キャラ。彼の使う「バンジーガム」は攻撃にも防御にも使用でき、その応用力は無限と言っていい。しかし、そんな戦闘スタイルを持つヒソカも、今回は防戦一方の展開になってしまう。

 クロロは、個々の能力をただ連続的に使用するものではなく、コピー人形を製造、偽クロロを操作、爆弾人形と人間を同時に操作……という複雑な工程を同時進行で動かし、無限にスタイルを変化させる。闘技場においてヒソカを追い詰めていく様は、さながら戦闘のシンフォニーとも言えよう。戦闘の描写は説明よりも演出に比重が置かれ、断片的に描かれるシーンも多く、能力が複雑に入り混じるさまに、読者の多くが混乱したのも当然だろう。 

 バトル漫画に“読解力バトル”という新境地を開拓した2人の戦いはクロロの勝利に終わり、多くの読者が「ヒソカがここで死ぬのか」と驚愕したはずだ。だが、ヒソカは事前に仕込んでいた“死後強まる念”によって蘇生。復活と同時に旅団メンバーを殺害するヒソカに、クロロとの“第2ラウンド”への期待は否が応でも高まった。 

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