
池田理代子氏の『ベルサイユのばら』は、生誕から50年以上経った今でも多くの人に愛され続けている名作だ。本作の主人公である男装の麗人、オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェが、フランス革命前後の激動の時代を生きる壮大な歴史ロマンである。
オスカルは美しい女性でありながら、男性として生きている。そんなオスカルは力強くて頼もしく、ロザリー・ラ・モリエールでなくとも、読者の誰もが心を奪われてしまうだろう。
そこで今回は『ベルばら』好きの筆者が、オスカルが最高にカッコいいと思うシーンを独自目線で選んでみた。アンドレに恋する女性としてのオスカルも素敵だが、男性のようなたくましい魅力にあふれる姿を振り返ってみたい。
※本記事には作品の内容を含みます
■身軽だからできた!? 暴走する馬へ飛び乗りアントワネットを死守したシーン
まずは物語の序盤、フランス王室を護衛する近衛連隊長つき大尉として活躍するオスカルのシーンを紹介したい。
フランスに嫁いできたオーストリア皇女、マリー・アントワネットの護衛として活躍していたオスカル。ある日アントワネットが乗馬している最中、アンドレの不手際で馬が走り出してしまった。手綱の扱いを知らないアントワネットは、暴走する馬上で助けを求めるばかり。
オスカルはすぐさま馬でアントワネットを追い、彼女の乗る馬に並走すると、即座に馬から馬へと飛び移る。そして、アントワネットを抱きかかえて、そのまま地面に転がり落ちて救出するのだ。
馬から馬へと飛び移るという離れ業は、日頃からの厳しい訓練に加え、女性であるがゆえの身軽さがあってこそ成し得たものだろう。
また、その後国王から死刑を言い渡されたアンドレを、オスカルは自分の命をかけて国王に嘆願し、命を救っている。思えばこのシーンからアンドレはオスカルのために命を捨てる覚悟を持つようになり、2人の情熱的な恋愛が始まるのだ。
■ロザリーを軽々とお姫様抱っこ、舞踏会でも堂々とエスコートし羨望を浴びたシーン
作中にはオスカルのことを本気で愛した女性も登場する。それが上述したロザリーだ。パリの片隅でつつましく育ったロザリーがなぜオスカルのことを好きになったのか……それは彼女の普段の仕草や性格も影響しているだろう。
ある日、ロザリーに剣の使い方を指導したオスカル。しかしうまくできないロザリーは池に落ちてしまい、それを見てオスカルは大笑い。
「そうやってまい日あたしをからかってたのしんでいらっしゃるんだわ!」と、悔し泣きをするロザリー。そんな彼女をオスカルは軽々とお姫様抱っこし、真剣なまなざしで「…誤解だ…」と伝えるのであった。
また、ロザリーを舞踏会へ連れて行った際、華やかな軍服姿で彼女をエスコートするオスカルは、周囲が騒然となるほど注目を一身に集める。アンドレの“お前が女性の手を引くとこの騒ぎだ、ダンスなんぞやったらみんなひきつけをおこすぞ”というセリフも印象的だ。
このようなオスカルの言動にロザリーの胸はときめき、愛する気持ちを止められなくなっていくのだ。
オスカルの美貌と洗練された立ち振る舞いは、性別を問わず多くの人を虜にした。しかもその動作は決してわざとらしいものではなく、自然に滲み出ているものである。このような人物が実際に身近にいたら、ロザリーでなくても惹かれてしまうだろう。