■本当の友情とは…?「お金で買えない友情」

 コミックス第39巻に収録されている「お金で買えない友情」は、少年探偵団が阿笠博士とキャンプに出かけた先で、ある大学生たちに出会うところから始まる。そこで殺人事件が起きてしまうのだが、その動機があまりにもやりきれないことでも有名だ。 

 探偵団は大学のアウトドア同好会のメンバーである福浦玲治、白藤泰美、天堂晴華、飯合拓人と出会う。彼らはお嬢様である晴華がキャンピングカーを準備し、キャンプにかかる費用もほとんど出してくれていると話していた。 

 同好会メンバーと少年探偵団たちはともに楽しいひと時を過ごすが、やがて泰美が殺され、犯人が晴華だと判明する。その動機は思わず犯人に同情したくなるものだった。実は晴華はお嬢様でもなんでもなく、バイトを掛け持ちして費用を捻出している貧乏大学生だった。

 彼女は大学で友達を作るため、お嬢様キャラを演じ、借金をしてまで同好会の活動をしていた。ここまででも十分に悲惨な状況だが、事態はさらに悪いものだった。 

 実はほかの3人は彼女がお嬢様ではないことに気が付いていた。そのうえで一緒にキャンプに行き、贅沢三昧をしていたのだった。中でも泰美は晴華のことを「ただの金ヅル」と陰で話しており、晴華が運悪くそれを聞いてしまったことが犯行動機になっていた。

 真相を知った吉田歩美の「そんなの最初から友達なんかじゃない!!」、灰原哀の「缶ジュースの自動販売機と一緒だわ…」「お金を入れれば喉を潤してくれるけど… 入れなければ何も出してくれないもの…」というセリフも痛烈だ。 

 作品を見た後、「お金で買えない友情」というタイトルの意味が突き刺さるという、なんともやりきれない結末となっている。

 

 時に「イヤミス」のような一面を見せることもある『名探偵コナン』。感動エピソードやすっきりとした結末も良いが、こうした回こそ強烈に記憶に残っているという人も多いだろう。

 あなたの心に残っている、『名探偵コナン』の後味が悪いエピソードには、どんなものがあるだろうか。

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