
スクウェア・エニックスの人気RPG『ファイナルファンタジー』シリーズは、美麗なグラフィックと映画のようなストーリーで多くのゲームファンを魅了してきた名作である。
特に印象的なのは、出会いと別れのシーンである。これまで幾多の名シーンが描かれてきたが、別れのシーンにはプレイヤーに衝撃を与えたものも少なくなかった。
中でも『ファイナルファンタジーVII』(1997年)で、ヒロインのエアリスが、ラスボスでもあるセフィロスの刀に貫かれ壮絶な最期を迎えるシーンは、ゲーム史に残る衝撃の別れだと言っていいだろう。
このように、悲しすぎる別れは『FF』シリーズの十八番であり、これまでも幾度となく描かれてきた。今回はその中からあまりにも衝撃的すぎてプレイヤーの記憶に深く刻まれている、涙なしでは語れないシーンを振り返ってみたい。
※本記事は各作品の内容を含みます。
■命と引き換えにアルテマの魔法を託した『FF2』のミンウ
シリーズ初期にして、最初の仲間の別れという『FF』らしさの原点となったのが『ファイナルファンタジーII』(1988年)である。
本作はフリオニール、マリア、ガイ、レオンハルトの4人が主人公の物語で、レオンハルトが加わるまではいろいろなキャラが入れ替わりで仲間に加わり、その都度出会いと別れが描かれる。その中でも衝撃的だったのがミンウの死である。
物語中盤で、主人公たちは古代魔法アルテマを手に入れるため、ミシディアの塔を訪れる。そこでミンウは自らを命と引き換えにアルテマの封印を解き、主人公たちに託すのである。
ファミコンということもあり、容量の都合で描写はあっけないもの。だが、長時間ともに旅をした仲間の最期は悲劇的であり、シリアスな展開に慣れていなかったプレイヤーに衝撃を与えるには十分だった。
さらに悲しいのが、ミンウが命を賭して手に入れたアルテマの魔法が弱すぎたということだ。説明書にも「究極の魔法」と書かれており、どれほどの威力か期待していたプレイヤーも多かったはず。しかもミンウの犠牲によって手に入れて、「さあ、どれほどのダメージだろうか!」と使ってみても、これまで使ってきた、ファイアやサンダーとそれほど変わらない威力に拍子抜けさせられた。
この不遇な魔法のために命を落としてしまったミンウは本当に報われたのだろうか? そんなエピソードもあってかミンウとの別れはひときわ印象深いものとなっている。
■命を懸けた石化の魔法で主人公を助けた『FF4』のパロムとポロム
続いては、スーパーファミコンで発売された『ファイナルファンタジー4』(1991年)より、パロム&ポロムとの別れ。この作品も、多くの仲間が登場するが、その中でも物語の前半に仲間になる幼い双子の魔道士パロムとポロムとの別れは衝撃的であった。
主人公のセシルが、自らが所属するバロン王国に戻ってきた際、バロン王に化けていたボス・カイナッツォと戦闘になる。
激闘の末、セシルたちはカイナッツォを倒すが、カイナッツォは死後も凄まじいまでの執念で小部屋に入ったセシルたちを部屋ごと押しつぶそうとしてくるのだ。
脱出不可能かと思われたその時、パロムとポロムは石化の魔法ブレイクを自らにかけて壁の押しつぶしからセシルたちを守るのである。
自分自身の意思で石化しているため、石化解除の魔法エスナも効果がなく、「こんな幼い子どもたちがなぜ……」と世の無常を呪ったことだろう。
『FF』で犠牲になってきたキャラは成人男性キャラが多く、まだ幼い子どもが犠牲になったのは初めてでその衝撃は計り知れなかった。
だが、物語の終盤で2人は復活し再登場。プレイヤーをほっとさせた。
バブイルの巨人の体内に乗り込む場面でセシルたちを鼓舞するシーンやラストバトルでセシルたちに力を与えるシーンは胸が熱くなる。
自らの意思で石化しているのでエスナの効果がないというのはなんだったんだ? という疑問が残るが、そこにツッコミを入れるのは野暮なことかもしれない。