２００１年にフジテレビ系の木曜ドラマ枠で放送された連続ドラマ『ムコ殿』。脚本は、ドラマ『ＲＯＯＫＩＥＳ』や映画『帝一の國』などを手掛けたいずみ吉紘さんで、主人公の桜庭裕一郎を元ＴＯＫＩＯの長瀬智也さん、妻の新井さくらを２０２０年に急逝した竹内結子さんが演じている。
人気絶頂のトップスターが、愛する妻と世界一温かい家庭を作るまでの過程を描いたハートフルな物語は人気を博し、最高視聴率１７.５％を記録。さらに、桜庭裕一郎は作中で歌った楽曲『ひとりぼっちのハブラシ』で現実世界でも歌手デビューし、オリコンチャート１位を獲得する快挙を成し遂げた。今回はそんな懐かしのドラマ『ムコ殿』を振り返りたい。
※本記事は作品の内容を含みます。
■クールなスターの顔と妻想いで熱い夫の顔を持つ桜庭裕一郎
桜庭裕一郎は、“抱かれたい男Ｎｏ.１”の人気シンガーソングライター。クールさが売りだが本当は真逆で、情熱的かつ人懐っこい素朴な男性だった。
そんな裕一郎とさくらが出会ったのは半年前のこと。極秘入院していた裕一郎の病室にさくらが間違えて入ったことがきっかけだった。以来二人は愛を育み、ついに結婚を決めた。物語は、そんな裕一郎が新井家に挨拶に行くところから始まる。
新井家は、頑固な父・真澄（宇津井健さん）、息子・亮（相葉雅紀さん）を連れて出戻り中の長女・かえで（秋吉久美子さん）、男性アレルギーながらシングルで息子の努（神木隆之介さん）を育てる次女・あずさ（鈴木杏樹さん）、仕事人間で結婚意欲のない三女・さつき（篠原涼子さん）に四女・さくらの大所帯。もう一人、兄の柾（野村宏伸さん）がいるが、家族と確執があり同居はしていない。
個性的で癖の強いメンバーながら、天涯孤独の身にある裕一郎にとって新井家は憧れの家族だった。何としても結婚したい裕一郎は頭を下げるも、芸能人に理解のない父には反対され、さらに事務所側からは結婚を秘密にするように言われてしまう。
すると、さつきが婿養子＆同居を提案し、裕一郎は結婚できるならと婿養子入りを決意。晴れて新井裕一郎となったトップスターは、多忙な仕事をこなしながら新井家の真の家族となるべく奮闘するのだった。
裕一郎とさくらのピュアな愛にキュンキュンする『ムコ殿』。家族が賑やかゆえ常にワチャワチャしているが、心地よいテンポで見ることができるのも魅力の一つだろう。
さらに、熱い心を持つ裕一郎が新井家の面々に正面からぶつかり、次第に家族として心を通わせていく過程には惹きこまれる。自転車に乗れずいじめにあう努に自転車特訓を介して心の強さを教えたり、仕事でピンチに陥ったさつきのために動いたりと、妻の家族とここまで真正面から向き合う夫はなかなかいない。情熱的な彼の行動は、令和の時代でも称賛されることだろう。
■主役だけじゃない！演技派俳優たちが物語に華を添える
本作は何と言っても、長瀬智也さんと竹内結子さんのホンワカカップルが魅力だ。長瀬さんは芸能人としてのキリッとした顔つきから、オフの緩い表情へコロッと切り替える。今見返してもカッコよさと可愛さを併せ持つキャラはハマり役で、放送当時、「裕一郎最高」という声が絶えなかったのも納得だ。
そして、竹内さん演じるさくらもまた可愛いの一言に尽きる。家庭を切り盛りし、忙しい裕一郎を支える竹内さんの笑顔と健気な姿に癒やされたのは、筆者だけではないはずだ。シリアスな作品から本作のようなコミカルな作品まで幅広く演じられるのは、竹内さんの才能がずば抜けているからこそである。
そんな２人を取り囲むのは、これまた演技力の高い俳優たち。家族では、宇津井さんや秋吉さんらベテランが味のある演技を見せる一方で、篠原涼子さんや鈴木杏樹さんらトレンディドラマの常連女優たちが時に面白く、時に涙を誘い、相葉雅紀さんは思春期の若者ならではの繊細な姿を好演している。
とりわけ印象的なのは、当時８歳の神木隆之介さんだ。今回再視聴してあまりにも可愛い姿に目が釘づけになってしまったが、１９９６年にドラマデビューを果たした神木さんは、幼いながらもこの時すでに経験豊富な子役だった。本作後、神木さんは『千と千尋の神隠し』の坊役で更なる注目を集めることとなる。
関係者では、裕一郎が所属する小さな事務所オフィス・ガッツの社長・小峰卓郎さんを演じたつんく♂さんと、マネージャー・箱崎乙彦を演じた段田安則さんは素晴らしい存在だ。彼らが家族のように大切にしてくれたからこそ、裕一郎は幸せな家庭を作るという願いを叶えることができたと言えよう。
さらに、亮が片思いする先生役に小雪さん、あずさの同僚・千原剛役に遠藤憲一さん、コメンテーター役に内藤剛志さんら豪華な顔ぶれが並ぶ『ムコ殿』。安定感のある俳優が揃ったことで、作品がより華やかになったのは間違いない。
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