
日本を代表する少女漫画雑誌『りぼん』(集英社)は、今年で創刊70周年を迎える長い歴史を持つ。これまで多くの恋愛漫画が掲載され、きらきらと輝く男女の恋愛シチュエーションに、胸をときめかせてきた読者も多いだろう。
しかしそんな『りぼん』に掲載された恋愛ストーリーには、主人公に大きな壁が立ちはだかることも少なくなかった。好きな相手が転校するのはもちろん、“記憶喪失”や“兄妹疑惑”といった驚くべきハードルも描かれてきたのである。
今回は『りぼん』の人気作品から、あまりにも大きな恋のトラブルに襲われたシチュエーションを紹介したい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■両親の“入れ替え結婚”に起きた兄妹疑惑『ママレード・ボーイ』
1992年5月号より連載された吉住渉氏による『ママレード・ボーイ』は、高校生の主人公・小石川光希と、同級生の松浦遊による青春ラブストーリーだ。
本作は、光希と遊の両親がお互いのパートナーを交換したいと言い出し、2組の家族が同居を始めるという波乱の展開からスタートする。両親たちに巻き込まれる形で、やむなく一緒に住むことになった光希と遊。最初はいがみ合っていた2人だが、日々の生活でお互いを意識し始め、やがて恋に落ち、愛を育んでいく。
しかし幸せな時間は長くは続かない。遊が親の過去の写真を見つけたことで、崩壊の危機を迎えてしまうのだ。
母親の学生時代の写真に写っていたのは、光希の父親と仲睦まじく写る様子だった。これにより遊と光希は異母兄弟の可能性が浮上してしまい、遊は断腸の思いで光希に別れを告げるのである。
同居人というだけでも恋愛のハードルは高いのに、さらに異母兄妹疑惑も出てきてしまった衝撃的な展開。これがきっかけで光希と遊は、その後長い別れを経験することとなる。
すべては“両親S”の行動が原因であり、思わず「もうちょっとしっかりしてよ!」と、両親たちに叫びたくなった読者も多かっただろう。
■記憶喪失から交通事故…波乱万丈すぎる男女の関係に釘付け『砂の城』
一条ゆかり氏の代表作でもある『砂の城』は、1977年から連載された作品だ。本作にも現実ではなかなか起こりえない、恋愛における大きな試練が主人公を待ち受けていた。
富豪の娘である主人公・ナタリーは、屋敷の前に捨てられていたフランシスと兄妹同然に育ち、やがて愛し合うようになる。しかし身分の差から周囲の反対に遭い、悩んだ末、2人は海へ身を投げてしまうのだ。
その後、奇跡的に助かるも、離れ離れになってしまった2人。ナタリーはフランシスを捜し続け、ようやく見つけるものの、彼は記憶を失い、別の女性と家庭を築いていた。
だが、ナタリーの「あたしよ…フランシス…」と訴えかける声で、フランシスは記憶を取り戻す。感動の再会を果たし抱き合おうとした2人だったが、なんとその瞬間、フランシスはバスにはねられて命を落としてしまうのだ。
このようにナタリーとフランシスには“身分の差”、“記憶喪失”、“交通事故”という3つの壁が立ちはだかり、なかなか結ばれない。これが現実であれば、1つ目の壁の時点で諦めてしまいそうなものだが、ナタリーは最後までフランシスへの想いを断ち切ることはなかった。
フランシスの死後、もう二度と恋愛はしないと決意するナタリー。しかしフランシスが残した息子を巡り、再び愛憎渦巻く世界に身を投じていくのである。