■グラフィックが描けない…自由度の低さに打ちのめされる

 初代で行き詰った筆者は、すぐに『ファミリーベーシックV3』に移行した。筆者はバージョンアップされた『ファミリーベーシックV3』であれば、簡単にゲームが作れると思っていたのだ。だが、そもそも「プログラムとは何か?」という段階からのスタートであり、「行」と「実行」の意味すら分からなかった。さらに、ローマ字ばかりの画面は難解だった。

 そもそも、当時のファミコンゲームは説明書を読まなくてもプレイできるものばかりだったため、小学生の筆者には「読んで理解する」という発想自体がなかったように思う。

 その後、4歳上の兄にも協力してもらい、キャラの入れ替えや移動、ジャンプ、敵キャラの作成といった基本的な動作まではなんとか進めた。意外なもので、やり続けるうちにプログラムのイメージまではなんとなく掴めるようになったのだが、兄が買ってきたパソコン雑誌に載っているプログラムを参考に打ち込んでも文字数が足りなかったり、命令文が違ったりして苦労した。

 最大の誤算は、オリジナルゲームができると思っていたのにキャラクターを自分でデザインできないことであった。特にグラフィックが描けないのは、自由度の面で大きな壁であり、打ちのめされてしまった。

 キャラクターだけでなく、背景やブロックなども自分なりにデザインできることを期待していただけに、がっかりしてしまった。もっと自由に描けていたら、印象は大きく違ったかもしれない。

■時間がかかり過ぎてエラーに…サンプルプログラムの入力で力尽きる

 サンプルプログラムを自分で入力して練習しようと思って試してみるも、そもそもタイピングが遅く、キーボードを1つずつ叩いていくのだから時間がかかりすぎる。当時は人差し指だけで入力していたのでなおさらだろう。慣れない作業に指や首が疲れ、辟易した。

 ほかにも、スペースの入力忘れやスラッシュが入ったゼロとオーの入力ミス、実行時にエラーになるなど、だんだんと苛立ちは募るばかりであった。

 結局、ゲームらしいものを作ることはできず、膨大な入力作業に力尽き、断念することに……。今、振り返ればたいした作業量ではなかったのかもしれないが、当時はとても大変に感じた。

 最終的にはサンプルゲームを遊んで友人に返したのだが、「な?」と一言……。やはり友人も同じように力尽きてしまっていたようである。

 

 筆者は高校卒業後、社会人を経て10年後にコンピュータの専門学校に入学した。BASIC(ベーシック)やC言語でプログラムを学んだ際に簡易ゲームを作る経験をしたが、そこで『ファミコン』や『ファミリーベーシック』の容量の少なさにあらためて驚かされたものだ。

 振り返ってみると『ファミリーベーシック』は、時代を先取りしすぎた存在であったように思う。しかしあの時代に『ファミコン』を利用したプログラムでゲーム制作をしようとした任天堂の先見性と挑戦心には、今でも感心せざるを得ない。

  1. 1
  2. 2
  3. 3