■陰で鬼殺隊を支えた、耀哉よりも少し年上のあまね
そんなあまねと耀哉との出会いは、本編の姿からはイメージできないものの、意外とロマンティックなものだったようだ。
産屋敷家は代々短命のため、神職の一族から妻をもらうという両家のしきたりがあった。彼女の旧姓は神籬(ひもろぎ)。神籬とは、神道において神を祀る際に、臨時で神を迎えるための場所や依り代のことをいうらしい。
出会った当時、耀哉は13歳、あまねは17歳だった。立場的には耀哉が上であるが、見合いの際に「貴女が嫌なら私からこの話は断ります」という、あまねの立場を思いやる耀哉の一言で結婚を決めたらしい。感情を読み取りづらいクールな彼女だが、双方への思いやりや愛を感じるなんとも素敵な馴れ初めだ。
その後あまねは19歳で5つ子の母となる。5つ子を取り上げるのは初めてだと医者や産婆も驚いたようで、彼女からは母の強さもしっかりと感じることができる。
あまり知られてはいないが、あまねは神職の一族らしく、断片的な予知夢を見ることもあるらしい。夫と子どもたちの息災を願って雪の降る日でも禊祓(穢れを落とすための水浴び)をしていたようで、表立って描かれない部分でも、厄を避けたりと鬼殺隊の役に立っていたのかもしれない。
本編ではあまり語られないが、鬼殺隊には彼女のように、詳しく描かれることはなくとも陰で貢献した功労者はたくさんいるのだろう。何よりあの圧倒的な存在であるお館様のそばにいて、その距離感や穏やかな様子から、2人が深く慈しみ合っているということが感じられるのだから、彼女の存在がお館様を大きく支えていたのは想像に難くない。
『鬼滅の刃』ではセリフにない表現からも、人間性や各々の関係が垣間見えるのが作品の魅力だ。