■生前はどんなスタンド使いだったのか…「ノトーリアス・B・I・G」

 次は、第5部「黄金の風」で最も主人公たちを苦しめたスタンドのひとつ「ノトーリアス・B・I・G」だ。赤黒い肉塊によく似た不気味な見た目はホラー映画を思わせるが、戦闘力もホラー映画に出てくるモンスターのように理不尽そのものである。

 周囲の動くものに全く同じ速度で襲いかかる能力を持ち、狙われれば絶対に逃げきれない。さらに、とある理由から攻撃を受けても消滅しない「不死身」のスタンドのため、防御も完璧だ。

 その異常な性能を裏付けるかのように、ステータスは「破壊力A、スピード・射程距離 ・ 持続力∞、精密動作性・ E 、成長性・A」と『ジョジョ』を通しても滅多にお目にかかれない高水準。∞が3つ並ぶスタンドは他に類を見ない。

 チートすぎるノトーリアス・B・I・Gは作中でも猛威を振るい、主人公のジョルノ・ジョバァーナらブチャラティチームは手も足も出なかった。ジョルノをして「こいつ………無敵…か」とまで言わしめている。

 ここまでなら文句なしに強いスタンドだが、実は大きすぎる欠点がある。発動条件が「本体の死亡」なのだ。本編では、グイード・ミスタに倒された男性・カルネの怨念によってノトーリアス・B・I・Gが発動しており、本体がこの世にいないため常識外の挙動をするのだと推測されている。発動すれば無敵でも生前はその恩恵にまったくあずかれないのだから、まるで意味がない。なんとも困ったスタンドだ。

 ところで、ノトーリアス・B・I・Gの本体であるカルネの生前はどうだったのだろう? 彼はミスタに倒される直前にスタンドを使おうとしており「自分はスタンド使いだ」と自覚はしていたようだ。死んで真価を発揮するノトーリアス・B・I・Gの生前は謎に包まれており、もし使えるようになったら、その検証だけはしてみたいものである。

 

 一度覚醒したスタンド能力が他のものに変わるケースは少なく、ほとんどのスタンド使いは自分が得た能力で戦うしかない。たとえそれが、能力や副作用のせいで「微妙」すぎるスタンドだとしてもだ。

 「配られたカードで勝負するしかない」とはよく言うが、今回見てきたスタンドの使い手は、いずれも主人公やその仲間を追い詰めた。その功績だけは、決して「微妙」ではないのだ。

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