主人公たちも苦戦したけど…『ジョジョの奇妙な冒険』冷静に考えたら「微妙」だった敵スタンド「エボニーデビル」に「ノトーリアス・B・I・G」も…の画像
アニメ『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』 (c)荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険SC製作委員会

 1986年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載が始まった、荒木飛呂彦氏の能力バトル漫画の金字塔『ジョジョの奇妙な冒険』。アニメシリーズ第7部『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』のアニメ化も発表され、ファンの期待もますます高まっている。

 本作の最大の発明といえば「スタンド」だろう。“超能力をわかりやすく読者に見せたかった”という荒木氏の想いから生み出されたこの能力は千差万別で、歴代のジョジョはもちろん、敵のスタンドも魅力的だ。たとえば、DIOの「世界(ザ・ワールド)」、吉良吉影の「キラークイーン」など、主人公たちを苦しめたスタンドはその筆頭である。

 だが、主人公たちを苦戦させたスタンドが必ずしも魅力的とは限らない。むしろ冷静に考えてみると「微妙じゃないか……?」と思える能力も、少なからずある。
 今回は『ジョジョ』本編では活躍したが、よくよく考えると微妙な敵のスタンドを見てみよう。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■作者に「弱い」と断言されていた!?「エボニーデビル」

 まずは『ジョジョ』3部でジャン・ピエール・ポルナレフと激闘を繰り広げた「エボニーデビル」から。

 タロットカードの「悪魔」を暗示するこのスタンドは、本体の“呪いのデーボ”の恨みをパワーに変える遠隔操作型のスタンドだ。

 本編ではデーボがポルナレフの攻撃をわざと受けることで怨念を蓄え、近くの人形に憑依。「呪いの人形」となり、ポルナレフを攻撃する。ベッドの下でポルナレフを拘束する頭脳プレーも見せており、最後は敗れたものの一筋縄ではいかない難敵だった。

 作中の活躍だけを見れば悪くないエボニーデビルだが、能力を分析してみると正直使い勝手が悪い。恨みのパワーを発動させるには本体がわざとダメージを受ける必要があり、実際、作中でデーボは片目を潰されてようやく発動している。

 しかも、エボニーデビルが受けたダメージは本体にフィードバックされてしまう。わざとやられてボロボロな体に戦闘のダメージまで追加されるのではたまらない。勝っても負けても本体は傷だらけで、連戦なんてもってのほかだろう。厳しい制約の割には能力自体も大したことがなく、もはやポルナレフを追い詰めたデーボの戦闘センスを誉めたいぐらいだ。

 かくいう荒木氏も自身の著書『荒木飛呂彦の漫画術』において、“デーボは意図的に弱い敵として出した”と語っている。生みの親にすら「弱い」と断言されてしまったデーボとエボニーデビル。インパクトは強かったが、なんとも微妙なスタンドであった。

■本体も鉄塔に閉じ込められる! 「スーパーフライ」

 第4部「ダイヤモンドは砕けない」に登場する鋼田一豊大の「スーパーフライ」も、作中の恐ろしさと能力の微妙さにかなりのギャップがある。現実の鉄塔と一体化しているスーパーフライは、鉄塔に立ち入った1人の人間を閉じ込め、無理に出ようとする者を鉄塔の一部に変えてしまう能力を持つ。

 作中では主人公・東方仗助がスーパーフライの領域に入ってしまい、鋼田一と戦闘をくり広げることに。攻撃をそっくりそのまま返すスーパーフライの性質に仗助は苦戦を強いられ、自称宇宙人である支倉未起隆の助力がなければ一生を鉄塔の中で過ごすハメになっていたかもしれない。

 スーパーフライの最大の難点は「1人の人間を閉じ込める」性質が本体にも適応される点である。鋼田一自身も鉄塔から脱出できず、全ての生活を鉄塔内で完結させる究極の自給自足を余儀なくされていた。そのおかげで鉄塔のすべてを知り尽くし、仗助を翻弄できたのは不幸中の幸いであろう。

 そんな鋼田一も「この鉄塔から出る事しか考えていなかった男だぞッ!」と言っており、やはりスーパーフライに縛られる生活はつらかったようだ。戦う相手はおろか本体にすら嫌がられるスタンドは、まさに「微妙」と評価するほかない。

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