
『ジョジョの奇妙な冒険』第4部「ダイヤモンドは砕けない」に登場する矢安宮重清、通称「重ちー」。見た目こそ小太りでいかにも弱そう、性格も間の抜けた少年として描かれていたが、彼のスタンド「ハーヴェスト」は、使い方次第ではシリーズのラスボスすら倒しかねないほどのポテンシャルを秘めている。
時に最強説も浮上するほどの「ハーヴェスト」について、作中の描写から読み取れる性能や強み・弱みをおさらいしつつ、そのスゴさを検証していこう。
※本記事には作品の内容を含みます
■ハーヴェストの性能をあらためておさらい
まず、ハーヴェストの基本性能をおさらいしておこう。約500体に分裂可能な群体型スタンドで、サイズは手のひらほどの小型。その圧倒的な数による索敵能力と、驚異的な射程距離こそが最大の武器である。作中では杜王町全域をカバーしていたことが描写されており、シリーズを通しても屈指の規模だといえる。おまけにそれぞれの個体が命令に基づいて自律行動し、町中を一斉に探索することが可能だ。
この「数」と「範囲」の利点を活かせば、本体を守りながら攻撃と回収を同時に展開するなど、「逃げつつ攻める」というゲリラ戦術が十分成立するのである。
遠隔操作型の宿命として、破壊力が低いという短所はある。しかし、ハーヴェストの場合、その「数の暴力」がそれを完全に補っている。1体の攻撃力は低くとも、約500体が一斉に動けば、急所を狙ってのピンポイント攻撃や広範囲のサーチ&デストロイを実現可能だろう。事実、作中では東方仗助と虹村億泰という強力なスタンド使い2人を翻弄し、仗助には“ハーヴェストに勝てるやつは考えられない”とまで言わしめた。
ハーヴェストにはさらに特筆すべき能力がある。注射針状の器官を使って液体を注入できるのだ。作中ではアルコールを血管に注入する描写があったが、毒物や化学薬品を使えば暗殺にも転用できる。この攻撃が真価を発揮するのは、ディアボロやエンリコ・プッチのような、一撃必殺を避けつつ遠隔でじわじわダメージを与える必要がある敵との対決時であろう。
ただし当然ながら万能ではない。1体1体の耐久力は高くなく、遠距離型や弾幕型のスタンドとの相性は悪い。さらに本体である重ちーの精神面の未熟さ――これこそが最大の弱点だった。第4部本編では殺人鬼・吉良吉影と対峙した際、彼の猟奇的な行動に動揺したせいもあり、真価を発揮できないまま敗北してしまう。しかし、もしも「相手を殺す覚悟」を持ち、一切の容赦なしにスタンドを使えるほど覚醒していたら――重ちーはまさに歴代ラスボスにすら勝てるスタンド使いとなっていたに違いない。
実際、『ジョジョ』読者の間では「キラークイーンは初見殺し」とも評されており、重ちーの敗北はスタンド性能の差というより、不意打ちに対応できなかったのが敗因とする見方もある。そのポテンシャルが開花する前に命を落としたことが、読者の間で今なお“惜しいキャラ”として語り継がれる理由のひとつだろう。