■ジオンの英雄は、なぜここまで戦果を挙げられた?
ジオン公国軍における撃墜数の厳格な管理体制もあるが、戦争で劣勢に立たされた側は士気高揚のために英雄を求めるのが常である。その背景を踏まえたとしても、彼のすべての実績が幻とは考えにくいが、多少なりともプロパガンダに用いられた可能性は否定できない。
しかし細かい数字の違いはともかく、敵陣営すら認めたブレニフの実力は本物と考えるほうが自然だ。「ワンショット・キラー」の異名からは、撃墜に特化した卓越した射撃精度がうかがえるし、ムダ弾を使わないスタイルなら継戦能力も相当高かったことだろう。
それに射撃精度に優れたブレニフであれば、戦争末期に投入されたゲルググ・キャノンとの相性も抜群に良さそうだ。手持ちのビーム・ライフルと肩部に備えたビームキャノンによる高火力は、連邦兵にとって恐怖の対象だったのではないだろうか。
しかも「エース・パイロットログ」には、ブレニフは近接格闘においても大きな戦果を残したとの記載もある。実は彼のパーソナルマークは「巨大なトマホーク」であり、「ワンショット・キラー」の異名とはイメージが異なる。
あるいは彼に対する先入観で相手の油断を誘い、戦果を重ねていった……なんてことも考えられるかもしれない。
今回は一年戦争における両軍通じてのトップエース「ブレニフ・オグス」について掘り下げてみた。映像作品で活躍が描かれたわけではないので知らない人も多いだろうが、資料に見られる彼の人柄や逸話などは非常に興味深い。いつか彼のような知られざるエースパイロットの活躍が、アニメ作品などで観られる日が来ることに期待したい。