「変身シーンがトラウマ…」仮面ライダーの異端児「ネオライダー3部作」の生々しすぎる「恐怖描写」の画像
『仮面ライダー:真・ZO・J』Blu-ray BOXより (c)1992 東映・東映ビデオ・石森プロ (c)1993 東映・東映ビデオ・石森プロ (c)1994 東映・東映ビデオ・石森プロ

 「平成仮面ライダー」最初の作品は? と聞かれたら、大多数の人が2000年より放映開始した『仮面ライダークウガ』だと答えるだろう。もしくは平成元年に放送中だった『仮面ライダーBLACK RX』かもしれない。

 しかしながら、平成の世に誕生し、その後のシリーズの礎を築いた「平成仮面ライダー」の“本当の最初の”は、そのどちらでもなく、1992年よりオリジナルビデオ、劇場作品として展開された「ネオライダー」3部作なのではないだろうか。

 シリアス傾向で怪奇テイストなストーリー、トラウマ的描写、リアリティを追求したアクション……まさに、それまでの「昭和ライダー」とその後の「平成ライダー」のハイブリッドとでも言うべき作風。中でも、トラウマという点においては、当時の子どもたちだけでなく、大人たちにとっても、もはや恐怖でしかないシーンが数多く描かれていた。今回は、そんな「ネオライダー」3部作のトラウマシーンを振り返っていこう。

※本記事には各作品の内容を含みます。

■「脊髄剣」の元祖?『真・仮面ライダー 序章』グロテスクのオンパレード!

 「ネオライダー」のトラウマと言えば、1992年にオリジナルビデオとして発売された『真・仮面ライダー 序章』が真っ先に挙げられるであろう。なぜなら、本作は全編がトラウマシーンと言っても過言ではない作風からだ。

 本作は、当時、約3年ぶりとなる『仮面ライダー』の新作だった。主人公は、ひょんなことから改造兵士開発プロジェクトの実験台となってしまった風祭真(石川真さん、旧芸名・石川功久)。さまざまな思惑が絡み合う中、真は自分の肉体をレベル3の改造兵士にしたマッドサイエンティスト・鬼塚義一と戦いを繰り広げることとなる。

 冒頭でいきなり女性ばかりを狙った連続殺人事件が起こったかと思えば、劇中のいたるところで次々と人が死んでいく。その凄惨なゴア描写たるや、流血シーンのオンパレードであり、本当に血のりなのかと目を疑うほどリアル。

 さらに、主人公の風祭真の変身シーンも圧巻。従来の仮面ライダーは変身ポーズを取り、ベルトの風車などが回転し、一気にライダーの姿へと変貌を遂げるという変身シークエンスが採用されてきた。ところが、本作での「仮面ライダーシン」は、肉体そのものがバッタ人間へと変貌していく様が詳細に描写されており、頭から触覚が飛び出し、目は白目をむき、苦しみ悶えながら変身する。より肉体的な苦痛を表現した変身シークエンスとなっているのだ。この変身シーンと仮面ライダーシンのグロテスクな生物的デザインにトラウマを植え付けられたファンも多いのではないだろうか。

 そして極めつけは、敵怪人に対するとどめの刺し方だ。なんと、相手の頭部を胴体から脊髄ごと引っこ抜くという荒業を披露する。藤本タツキさんの漫画『チェンソーマン』第二部では、戦争の悪魔が担任教師の背骨を抜き取り剣として使用する「田中脊髄剣」という技が登場し大きな話題となったが、仮面ライダーシンが元祖なのではないだろうか。

 このように、全編通してトラウマばかりを植え付けてくる本作であるが、タイトルに「序章」とついているだけに、続編を匂わせる形で物語は幕を閉じる。しかしながら、30年以上が経過した現在でも続編は製作されていない。この事実は、違う意味で特撮ファンたちにトラウマを残した。

■『仮面ライダーZO』ホラー映画のような異様さ、クリーチャー造形にも注目

 前作がかなり攻めた内容だったことに対して、次作となる1993年の劇場用作品『仮面ライダーZO』は、より王道のヒーロー譚に近づけた物語が繰り広げられる。

 本作の主人公となるのは、昏睡状態から目を覚ました麻生勝(土門廣さん)。彼は、謎の声の導きにより、ネオ生命体・ドラスの魔の手から少年・宏の命を守ろうと躍動していく……。

 かつて仮面ライダー1号や2号、V3に、ともに戦う「少年仮面ライダー隊」と呼ばれる子どもたちがいたように、ライダーと少年の絆は「仮面ライダー」の神髄。本作では主人公の勝と宏の友情が明確に描かれており、これこそ本当の「仮面ライダー」だ! と声を大にして言いたくなるような描写が際立っている。

 とはいえ、そこは「ネオライダー」。前作同様にシリアスでダークなシーンも散りばめられている。本作で最もトラウマを植え付ける存在と言えば、敵怪人であるネオ生命体・ドラスであろう。デザイン的な面では、メカニックな部位が目立つものの、全体的には巨大昆虫そのもの。何度追い払っても、執拗に追いかけまわしてくる姿は恐怖でしかない。

 強力なレーザー光線を発射し、人々が逃げ惑う中、辺り一帯を焼野原状態にするシーンは、中央にドラスを据えて、引きで撮るカメラワークも相まって、異様な光景。その後のクライマックスでは、ドラスが同情心を引くために、少年のような姿を見せる場面もある。その容姿は恐ろしく、Jホラー映画のようなおどろおどろしさがあった。

 ドラスの他、本作では人面と女性的なボディデザインに蜘蛛の手足が備わったクモ女、掌や額などにも眼球が埋め込まれたコウモリ男といったトラウマ級怪人が登場する。こうしたデザインは、後に『牙狼』シリーズで有名になる雨宮慶太監督によるものであり、モンスター、クリーチャー好きにとっては、拍手を送りたくなるほどのクオリティである。

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