■石ノ森章太郎のメッセージ性が色濃く、地球への不安を煽る『仮面ライダーJ』
ついに仮面ライダーが巨大化して戦う! そんな実にポップなプロットであると同時に、実にメッセージ性の強い作品だったのが1994年の劇場用作品『仮面ライダーJ』。そのため、前2作と比べると、トラウマシーンは比較的少ない印象を受ける。
本作は、精霊の力によって、仮面ライダーJとなった瀬川耕司(望月祐多さん)が、地球上の全生命体を絶滅させようと企むフォッグを相手に、熾烈な戦いを繰り広げる物語。
「仮面ライダー」は漫画家・石ノ森章太郎さんが環境破壊への警鐘として生み出したヒーローである。そういった意思を引き継ぐ本作は、虫や魚といった生物たちが命を落とし、蔑ろにされている描写が視聴者に強い印象を与える。未来の地球への不安などが観る者の恐怖感を煽り、ある意味でトラウマを残すのだ。
全体的に暗い画面、戦いの最中に仮面ライダーが傷を負い弱る、謎の霧が晴れるとそこには怪人がいるなど、まるで怪奇ドラマであるかのような演出も脳裏に焼き付いている。
敵である超巨大生命体フォッグ・マザーは全ての怪人を生み出した母。彼女が環境を破壊し続ける地球人へ復讐をしていると考えると、より一層の怖さがある。スチームパンクと生物が融合したクリーチャーデザインも夢に出てきそうな恐ろしさだ。
仮面ライダー生誕20周年を記念して製作された「ネオライダー」3部作は、大人向けの作品だったとはいえ、あまりにも多くのトラウマを植え付けた。トラウマ描写に耐性のある現代人といえども、思わず目を背けてしまうこと請け合いである。