
みなさんは「昭和のヒーロー」といえば誰を思い浮かべるだろうか? 昭和はさまざまなヒーローが誕生した時代だが、なかでも1966年から放送が始まった『ウルトラマン』シリーズを思い出す人も多いだろう。
彼らは地球がピンチに陥ると颯爽と登場し、傍若無人に暴れる怪獣たちに果敢に立ち向かい、必殺技で打ち倒す。最高にカッコ良いウルトラマンは、昔も今も視聴者たちに勇気を与えてくれる存在だ。
だが「昭和ウルトラマン」シリーズでは、時に「何してるの……?」と首をかしげたくなるような突飛なバトル展開もしばしば見られた。そんな時のウルトラマンは、ただ正義のヒーローではなく、どこか人間味溢れる別の顔が垣間見え、またそれもぐっと彼らを身近に感じさせたように思う。
今回は「昭和ウルトラマン」たちが見せた「コミカルな面白バトル」を振り返っていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■ジラースを煽り肩で笑う…闘牛士のようなウルトラマン
まずは『ウルトラマン』第10話「謎の恐竜基地」から。このエピソードに登場するのが、風貌や鳴き声が東宝映画の『ゴジラ』を彷彿させるエリ巻恐竜・ジラースだ。
舞台となる北山湖ではなぜか魚が異常繁殖していた。科学特捜隊が調査に乗り出すと、“モンスター博士”の異名を持つ中山博士が、湖でひそかにジラースを育てていたことが判明する。魚の異常発生も、このジラースが食べ残した餌が原因だったのだ。
科学特捜隊に追い詰められた博士はジラースを湖から呼び出し「暴れろ!」と、命令。だが、哀れにも踏み潰されてしまった。
制御不能となり、北山湖周辺を暴れまわるジラース。そこに颯爽と登場したウルトラマンが右手を振って煽る。
対するジラースは大きな岩を放り投げ、口から放った光線で粉々にし「どうだ」といわんばかりの自慢気な態度。するとウルトラマンもそれに対抗するかのように岩を拾い上げ、スペシウム光線で粉々にしてみせるのだ。
その後、ウルトラマンはジラースの頭を抑えて突き飛ばし、ひっくり返ったジラースをまたもや右手で煽る。「ハッハッハ」と、肩で笑うウルトラマンがなんとも心憎い。
ここからウルトラマンはジラースのエリ巻を引きちぎり、マントのように両手で右脇にひらひらと見せつけると、突進してきたジラースをまるで闘牛士のような軽快なステップで何度も翻弄。
最後は「ウルトラかすみ斬り」を繰り出し、ジラースをやっつけた。口から血を零して絶命したジラースを見て哀れと思ったのか、エリ巻をそっと添え、哀愁漂う姿を見せてウルトラマンは飛び立っていった。
いや、あんだけ煽っておいて寂しそうにするなんて……ウルトラマンのこの行動には、ついつい笑ってしまったものだ。