■今と違って手作り感がいっぱい

 晴海ふ頭へ向かうバスに揺られながら、初めて見る風景にドキドキしていたのを思い出します。銀座の街を南東へ下り、勝鬨橋を通って隅田川を渡ると、風景が一変。工場や倉庫のような無機質な建物が増え始めます。今も忘れられないのが、小雨を降らせている灰色の雲が少しだけ開けた空と海のあいだを白いカモメが飛んでいる光景です。

 午後になると雨脚が弱まり、ほとんど並ぶことなく床が雨とホコリで汚れた会場へと入場できました。悪天候ゆえか会場内の人は増え続け、外に出ていく気配はありません。

 雨はやみ始めたとはいえ館内は薄暗く、ワンフロアの会場は昼過ぎになっても場所によってはすし詰め状態です。

 近年のコミケなら「企業ブース」を訪れるのも楽しみのひとつだと思います。ですが当時は企業ブースはおろか、フードや画材販売などもなく、コミケのスタッフと参加者たちによる手づくり感あふれる会場でした。

■1982年当時、コミケでの人気作品は…!?

 1980年の再放送で人気に火が点いた『機動戦士ガンダム』は、81年から82年にかけて劇場映画が3部作で公開され、空前のガンダムブームを巻き起こします。その影響は1982年のコミケにも及び、人気キャラのシャアをはじめ、ガルマ、セイラ、マチルダなどを取り扱った二次創作本やパネルがサークルの机に置かれていました。

 そして目立っていたのが、いわゆる「美少女」関係のブースです。吾妻ひでおさんの『ふたりと5人』、内山亜紀さんの『あんどろトリオ』といった漫画作品を扱った本が目に入りました。ほかにもアニメ『未来少年コナン』のラナ、『ルパン三世 カリオストロの城』のクラリス、それに『花の子ルンルン』などの魔法少女関連の同人誌も多かった印象です。

 女性向けで目についたのは『ボルテスV』のハイネル、『闘将ダイモス』のリヒテルを中心とした同人誌。『キャプテンハーロック』は男女問わずの人気ぶりで、「特撮」「評論」「ミリタリー」といったジャンルは、やはり男性に大人気でした。

 また漫画家自身やその作品の世界観を応援する、いわゆる「漫画家FC(ファンクラブ)」のジャンルでは、『はみだしっ子』の三原順さん、『エロイカより愛をこめて』の青池保子さんの会報などを見かけました。

 このコミケの前年の1981年は『戦国魔神ゴーショーグン』や『銀河旋風ブライガー』のような今までにないオシャレな作品や、私ものめり込んだ『六神合体ゴッドマーズ』が放送。それらの作品の影響もあってか、事前に聞いていた以上に女性ファンが大勢訪れていました。

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