
尾田栄一郎氏の描く『ONE PIECE(ワンピース)』に登場する猛者のなかでも、不気味な存在感を示している“黒ひげ”こと、マーシャル・D・ティーチ。裏切りや謀略の末に凶悪な海賊団を従える船長となり、白ひげ亡きあとの「四皇」の座に就いている。
悪魔の実に対する執着やこだわりが強く、世界で唯一2つの悪魔の実の能力を得た人物としても知られる。最近でも“能力者狩り”と称し、世界中の有力な能力者を襲撃する様子が描かれてきた。
そこで今回は黒ひげが作中で欲しがった悪魔の実を振り返り、なぜ彼がその実を狙ったのかを考えてみたい。
※本記事には作品の核心部分の内容を含みます。
■お目当ての悪魔の実を得るために何十年も潜伏……
黒ひげが初めて入手した悪魔の実にして、彼が海賊団としてスタートを切るきっかけにもなったのが「ヤミヤミの実」だ。
黒ひげはヤミヤミの実について「“悪魔の実”の歴史上……最も凶悪とされるのがこの能力」と誇っており、その能力者が触れた相手は、いかなる悪魔の実の能力も使えなくなるという恐るべき効果を発揮する。
四皇や海軍大将を含め、作中の強者の大半が能力者であるなか、その能力を完封できるのは反則的な効果ともいえそうだ。
この能力がどうしても欲しかった黒ひげは、「ヤミヤミの実」を入手する可能性が最も高いという博打じみた理由で、「白ひげ海賊団」に何十年ものあいだ潜伏。古株になるほどの長期間在籍していたのだ。
そんな黒ひげの願いは叶い、白ひげ海賊団の四番隊隊長のサッチがヤミヤミの実を入手。すると黒ひげは親友だったサッチを殺害し、実を奪ったのである。
運がなければ諦めたというほど確率の低い賭けに出て、仲間殺しまでしてヤミヤミの実を奪った黒ひげ。そこまで執着したのは、やはり「悪魔の実の能力を封じる」という力が彼の野望達成のために不可欠だったからだろうか。
■誰に、何を魅了させるつもりだったのか!?
黒ひげは、王下七武海だった“海賊女帝”ボア・ハンコックの有する悪魔の実「メロメロの実」を狙って女ヶ島のアマゾン・リリーを襲撃している。
この頃、王下七武海制度が撤廃され、海軍は新型のパシフィスタを連れてハンコックを捕縛しようと現れる。そこに乱入するかたちで黒ひげ海賊団が参戦した。
黒ひげはハンコックの能力を手に入れたいと公言し、ヤミヤミの実の能力で彼女の石化能力を封じたが、すでに黒ひげの部下が多数石にされていた。そして仮にハンコックを殺して能力を奪ったところで、部下の石化は解除できないことが判明する。
そこに“冥王”シルバーズ・レイリーが介入。ハンコックが黒ひげの部下の石化を解除することを条件に、黒ひげたちは撤退したのである。
ハンコックの話によれば、メロメロの実は能力者の容姿の美しさがあってこその能力だという。つまり能力者自身の美しさで魅了しないと、対象を石化することはできないとも受け取れた。
その条件を黒ひげ自身が知っていたのかは不明。それに黒ひげが、なぜメロメロの実を欲しがったのかも明言されていない。少なくともこの時点の黒ひげ海賊団には、お世辞にもハンコックに匹敵するような美男美女は見当たらなかった。
また、ハンコックはサンダーソニアとマリーゴールドを含めて「ゴルゴン3姉妹」と呼ばれている。そのことからメロメロの実の石化能力の元ネタは、ギリシャ神話に登場する怪物「メドゥーサ」だと思われる。
ギリシャ神話で、切り落とされたメドゥーサの首の右側の血管から流れる血には「死者蘇生」の能力があり、左側の血管の血には「人を殺す力」があったという。
このあたり元ネタと同じような設定があるのだとすれば、黒ひげがメロメロの実を狙ったのは石化能力ではなく、その奥に秘められた「別の力」を求めてのことだったのかもしれない。