15歳でプロ棋士に、女流四段・香川愛生が両立させた「平成オタクカルチャー沼」 名探偵コナン、ハルヒ、ニコ動…の画像
香川愛生さん

 トップ女流棋士として活躍する香川愛生さんは、ゲーム・アニメ・漫画好きを公言する“オタク女流棋士”としても有名だ。オタク趣味を生かした将棋普及活動をする一方で、くずしろさんの漫画『永世乙女の戦い方』では監修を務め、実写ミステリゲーム『春ゆきてレトロチカ』(スクウェア・エニックス)に“俳優”として出演するなど、ポップカルチャー界でも存在感を見せている。そんな香川さんに、思い入れの深い「アニメ作品」について聞いた! 

【第2回/全3回】

■『名探偵コナン』をきっかけに推理ものが好きになった

──香川さんはアニメ好きでも有名です。お好きなアニメについて伺いますが、最初にはまった作品は何でしょうか? 

香川:名探偵コナン』です。私が物心つく頃にはもうテレビアニメが始まっていて、『金田一少年の事件簿』と連続で放送されていた“推理モノ黄金期”は、テレビにかじりつくようにして観ていました。 

──どういったところにひかれたのでしょうか? 

香川:名探偵が事件を鮮やかに解いていくのがかっこよくて、物心つく頃から今でも楽しんでいます。そして、気がついたらコナンくんの影響を受けて「シャーロキアン」(推理探偵小説の主人公、シャーロック・ホームズのファン)になっていました。 

 劇場版も好きで、毎年自分の誕生日の時期に新作が公開されるので、誕生日プレゼントのつもりで観ていました。7作目の『名探偵コナン 迷宮の十字路(クロスロード)』(2003年)の舞台が京都だったんですが、「京都の街って素敵だな」っていうイメージができたせいか、立命館大学(京都府にある私立大学)に進学しました。結構好きなものに影響を受け続けてきた人生ですね。 

── 『迷宮の十字路』が公開された頃というと、インターネットによるウェブブラウジングが気軽にできるようになり、情報の入り方も変わってきたタイミングです。そのあたり、香川さんはPC、インターネットとどのようにつきあってきたのでしょうか。 

香川:小学校高学年になってから、学校の情報の授業でPCを使うようになりました。ネットやAIが、将棋の研究に本格的に使われるようになったのは2010年代以降ですね。 

──それ以前……ゼロ年代後半には、ニコニコ動画のサービス開始とブームがありましたが、世代的には初音ミクなどのボカロ曲が直撃だったのではないかと。 

香川:まさにそうです。「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」が投稿された次の日には学校でも話題になりました。おそらくいま皆さんがYouTubeやTikTokを観ているような感じで、私たちはニコニコ動画に触れていた気がします。 

■アニメの良さを知るきっかけになった京アニ作品

──当時のニコニコ動画によって、オタクカルチャーの情報量も一気に増えたと思います。 

香川:涼宮ハルヒの憂鬱』は、ニコニコ動画の配信を友達と同時視聴して大変な衝撃を受けました。『ハルヒ』は社会現象的なヒットになりましたが、私が京都アニメーション作品に触れたのは『ハルヒ』が最初で。作画のキレイさとか、声優さんの凄さを改めて認識しました。いわゆる“日本アニメーションの良さ”を最初に感じた作品でしたね。 

──ニコニコ経由で出会いがあったわけですね。

香川:それから『らき☆すた』も観て……。そういえば、中学生の時、学校でダンス発表会という行事があったんです。EXILEが好きなチームがあったりする中、私が入ったのは、あまりダンス慣れしていないアニメ好きのチームで。「どうせそんな良い成績もとれないし、好きな感じでやろう」ということになって、『ハレ晴レユカイ』と『もってけ!セーラーふく』のJAM Projectミックス(※「JAMがもってった!セーラーふく」)に合わせたダンスをやったんですね。 

 そしたら、元のダンスのクオリティが高かったゆえに、EXILE系のチームを差し置いて優秀賞を獲ってしまって……。そのせいで、全校生徒や先生、保護者が参加するイベントでも踊ることになってしまったんですよ。 

──すごい結末ですね(笑)。

香川:でも、今となっては良い思い出です。この出来事のおかげで、平成のオタクとしてディープな経験をしてきたという自負が、ちょっとあります(笑)。 

■コスプレのキャラ選びは、“自分が好き”を優先

──香川さんといえば、「コスプレ」でも有名です。コスプレをするようになったきっかけを教えてください。 

香川:大学のゼミで仲良くなった女の子が、コスプレサークルの部長さんだったんですよ。今でも仲良くしてもらっていますが、イケメンな美女で、当時からひときわ目を引く子でした。当時、将棋の普及をするために何か言葉以外でできる発信方法はないかなと考えていて、好きな作品やキャラクターに愛情表現できるコスプレには、もともと興味があったんですね。だから、彼女にいろいろ教えてもらいながら始めたのがきっかけです。 

──コスプレのキャラはいつもどう選んでいるのでしょうか。 

香川:好きな作品の好きなキャラ……とこれに尽きます。話題の作品から選ぶ方も多いかと思いますが、自分はあんまりやらないですね。 

──香川さんのコスプレは、その完成度の高さにいつも驚きます。お母さまが衣装を作られることも多いようですが、どのような「共同作業」なのでしょうか?

香川:キャラクターの写真を見せて、設定資料集などがある場合はそれも送って作ってもらいます。プロではないので時間がかかりますが、1~2か月程度かけて作ってもらうことが多いですね。既製品はまず公式かどうかが心配材料になったりしますし、どうしても自分の体とサイズが合わないこともあるので……。手造りだとフィッティングができるので安心なんです。 

──そうしたオタク系の活動の一方で、数々の将棋の大会で結果を出し続けてきたというのが本当にすごいです。

香川:私は、小学校6年生の時に女流アマ名人戦で日本一になったのがきっかけでプロを目指すようになったんです。その結果、15歳でプロになることができました。当時は、生活にゆとりがあるタイミングを見つけては、アニメやゲームを楽しむことが多かったですね。そして大人になってからは、余裕を持つためにそういうコンテンツに触れようと心がけるようになりました。 

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