
『ガンダム』作品において、主人公が新型の後継機に乗り換える展開は盛り上がる要素のひとつといえるだろう。しかし初代『機動戦士ガンダム』において、主人公のアムロ・レイは愛機である「RX-78-2 ガンダム」を最後まで乗り続けた。
だが設定上では、アムロが乗り換える可能性のあった機体はいくつか存在する。そこで今回は、さまざまな理由でアムロの元に送り届けられなかった高性能な機体たちを振り返りたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■間に合わなかった連邦の「ニュータイプ専用機」
まず紹介したいのは、OVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』に登場した「ガンダムNTー1(RX-78NT-1)」。同機は「アレックス(ALEX)」のコードネームで呼ばれていた。
開発開始は宇宙世紀0079年8月であり、アムロが「ガンダム」に乗り込んで戦い始める約1か月前のこと。地球連邦軍のオーガスタ研究所が携わり、ジオンに遅れながらもニュータイプに適応する機体を作るために開発がスタートした。
もともと連邦はニュータイプの存在に懐疑的だったが、ガンダムに乗って大活躍するアムロの実力は看過できなくなる。そこでガンダムNTー1は、アムロ専用機として最終調整が行われていた。
しかし、連邦軍にはジオンのようなニュータイプ専用兵器のノウハウがあるわけではない。やむなく機動性と追従性を極限まで高めた結果、ガンダムNTー1は通常のガンダムの3倍もの推力を持つこととなる。
そのせいでとんでもなくピーキーな操縦性になってしまい、劇中でも技術者から「こいつをまともに扱えるのは一種の化け物」とまで言われる始末である。
とはいえ、圧倒的なスラスター推力を誇り、開発中のものとはいえ全天周囲モニターやリニアシートといった次世代につながる装備まで誇る最新鋭機だ。実戦配備まで秒読みの段階で、サイド6の「リボーコロニー」にて最終調整が行われていた。
しかし、そのサイド6がジオン軍の特殊部隊に襲撃され、テストパイロットが乗っていたガンダムNTー1は大きなダメージを負ってしまう。その一件の直後に一年戦争は終戦になり、とうとうガンダムNTー1がアムロのもとに届くことはなかったのである。
■砂漠に舞った「幻の妖精」
次に紹介するのは、ゲーム『機動戦士ガンダム CROSS DIMENSION 0079』で初登場した「ガンダム・ピクシー」だ。その開発経緯には多くの謎も残されているが、こちらもアムロに届けられるはずだった機体とされている。
まずガンダム・ピクシーの特徴として、重力下における陸戦用として開発された機体であることが挙げられる。「RX-78-2 ガンダム」からコア・ブロック・システムを排除して軽量化を図り、地上用の推進機を増設することで高速移動を実現。一年戦争時の地球圏において最速の機体といわれている。
武装は機動力を最大限に活かせる近接格闘戦に特化されており、リーチは短いが高出力の「ビーム・ダガー」を所持。機体表面に施された特殊コーティングによるステルス性もあり、高機動で忍び寄り必殺の一撃をくわえて離脱する運用が想定されていた。
ゲーム中では、地球連邦軍の輸送部隊「アルバトロス中隊」がガンダム・ピクシーの輸送を担当し、オデッサ侵攻作戦前にホワイトベース隊のアムロのもとに届けられる予定だった。
しかし、ゴビ砂漠付近でジオン軍の襲撃を受け、アルバトロス隊の「ボルク・クライ」がピクシーに搭乗。ジオンの隊長機である「イフリート」と壮絶な戦いの末、これを撃破した。
戦いで傷ついたガンダム・ピクシーはゴビ砂漠にいったん放置され、その後機体は回収されたものの、ホワイトベース隊に届くことはなかった。