常盤貴子&深津絵里コンビが尊い…再放送されない名作『カバチタレ!』チョイ役すらスゴイ!今観たら超豪華すぎる俳優陣【激レア名作ドラマ発掘隊】の画像
深津絵里 (写真/ふたまん+)
全ての写真を見る

 『週刊モーニング』で1999年から2005年にかけて連載された漫画『カバチタレ!』(監修・青木雄二氏、原作・田島隆氏、作画・東風孝広氏)。行政書士という物語展開が難しそうな職業を扱い、登場人物たちの人間模様に入り込みながら同時に実務法務の知識も得られるという魅力的な作品である。

 漫画のヒットをうけ、2001年にはフジテレビ系で実写ドラマの放送がスタート。主人公が男性から女性になっているなど変更点もあるが、行政書士の仕事をコミカルかつわかりやすく描いたテンポの良いストーリーが人気を集め、こちらも大ヒットを記録した。

 しかし、残念ながら本作は、近年ほとんど再放送されることがなく、視聴が困難なドラマの1つともなっている。今回は、そんなドラマ『カバチタレ!』を振り返ってみよう。

※本記事は作品の内容を含みます。

 

■凸凹コンビがいい!演技派女優が魅せる爽快なお仕事コメディ

 広島の方言で「屁理屈をいう人」という意味の「カバチタレ」。本作は大野行政書士事務所を舞台に、行政書士が法律を駆使して人々を救っていく物語だ。ドラマは大森美香氏が脚本を手掛けており、冒頭でも触れたように主人公が原作と違って女性になっているのがポイントで、「女性バディ」の活躍が魅力的なドラマとなっていた。

 主人公の一人は、両親を早くに亡くした苦労人・常盤貴子さん演じる田村希美。ある日希美は会社を不当解雇され、病院で医者に愚痴をこぼしていた。それを聞いていたのが、もう一人の主人公である深津絵里さん演じる行政書士の栄田千春だ。

 千春は希美に声をかけると、サラッと社長への内容証明を書き上げて見事に解雇予告金と未払い給与を勝ち取る。さらに後日、希美は恋人の茸本健司(保阪尚輝さん)に裏切られて温泉宿に売り飛ばされるが、上京した弟・優太(山下智久さん)の機転、そして千春と大野行政書士事務所によって救われる。

 これらを機に、希美は喫茶店勤務の傍ら千春の仕事を手伝うことに。2人は、時にぶつかり合いながらも依頼主の相談に向き合うのだった。

 温和でお人好しで「信じる者は救われる」と考える希美に対し、クールかつ勝気で「信じる者は救われない」と考える千春。真逆の性格ゆえ意見もズレるが、テンポのいい掛け合いで次第に確固たる絆を築いていく様子には心を掴まれる。

 また、再視聴して改めて感じたが、膨大なセリフ量を完璧にこなす深津さんは素晴らしい。少し『踊る大捜査線』の恩田すみれ感もあり、“気が強いけど可愛い女性”の役柄と深津さんの親和性の高さが伺える。

 一方の常盤さんも、ホンワカした天然キャラが完璧にマッチしている。これ以上の適役はいないのではと思うほどに、はじけるような笑顔が輝いていた。

 さらに、脇を固めるキャラも存在感抜群。所長・大野勇役の陣内孝則さんら事務所の仲間、弁護士・生田加寿子役の小林聡美さん、希美の弟・優太役の山下智久さん、ミニスカポリス・宮城京子役の篠原涼子らはその筆頭だろう。作中で扱う問題にはヘビーなものもあり、下手したら重苦しくなりかねないテーマだが、彼らのコミカルさによってうまく中和されているのだ。

■自分の力で人生を切り開く!働く女性の心に刺さるセリフも

 作中では、離婚・DV・相続・痴漢・競売物件などさまざまな問題を抱える依頼主が登場する。しかも、彼らは全員が被害者というわけでもなく、中には自業自得と感じてしまうような人物もいた。

 だが、行政書士は依頼主がどんな人物だとしても基本的には業務を遂行しないといけない。そのため、正義感の強い千春と希美は時折自分たちの仕事に思い悩む。

 本来であれば弱者を守るための法律も、必ずしも正しく使われるわけではない。同作は、時として弱者が喰われてしまうことすらあるという矛盾も描いているのだ。

 小林聡美さん演じる弁護士の生田が言っていたように、彼女たちの行動は行政書士の範疇を超えている部分もある。とはいえ、葛藤を抱えながらもそのたびに自分たちを奮い立たせ、大きく成長を遂げていく姿は、現実世界で働く女性たちにとっての大きなエールになる。同作を見て、励まされたという人も多いのではないだろうか。

 また、作中では働く女性の心に刺さる名言もしばしば飛び出している。たとえば、1話での希美と千春のやりとりは印象深い。

 仕事でも恋愛でも理不尽な目にあいながら、「我慢して笑っていればいつか綺麗な朝がくる」という母の言葉を信じて耐えていた希美。不幸に慣れてしている彼女を千春が叱咤すると、希美は「私はね、人を信じたいの、それが私の幸せなの!」と叫ぶ。

 それに対して千春は「私は仕事も人生も絶対に妥協はしない! 闘うの! 闘いたいの! それが私なの! だって自分の力で幸せ掴んでるって思って生きていたいじゃない」と言い返すのだ。

 たしかに人生を切り開けるのは自分だけ。千春のようなファイティングスピリッツは重要だ。一方で、相手の心に寄り添う希美のような考え方も生きていくうえでは欠かせない。上手くバランスがとれればいいのだが、懸命に生きていると見失ってしまうこともあるだろう。同作を見ていると、そんな大切なことにも改めて気づかされる。

  1. 1
  2. 2
  3. 3