■大胆すぎる転換は、もはや伝説?『タカヤ-閃武学園激闘伝-』
2005年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された、坂本裕次郎さんの『タカヤ-閃武学園激闘伝-』は、作風、タイトルともに大きな方向転換を見せた作品だ。
本作は、力ある者が生き残る「閃武学園」に入学した主人公・火叢タカヤが、強敵たちと激闘を繰り広げていく学園バトル漫画だ。
主人公が格闘技を身につけ、新たな力を会得していく成長劇。個性豊かな大技がぶつかり合う手に汗握るバトルなど、『ジャンプ』作品ならではの熱さを感じ取れる一作だ。
作中では、タカヤが格闘大会「閃新会」に参加し、バトル漫画の王道的展開が繰り広げられていく。だが、この大会終了後にこれまでの作風が一変してしまう。
なんと、大会を勝ち抜いたタカヤはその後、突如、剣や魔法が存在するファンタジーの世界へと迷い込んでしまうのだ。格闘バトル漫画から、まさかのファンタジー路線……登場人物もタカヤとヒロイン・白川渚を残し大部分が刷新されるなど、あまりにも大胆な場面転換は読者を唖然とさせた。
また、この路線変更によってタイトルも『タカヤ-夜明けの炎刃王-』に変更された。前半では格闘技で戦っていたタカヤも、以降は剣を手に異世界の住人や怪物たちと渡り合っていく。
実は本作、グランプリを受賞することとなった読み切り作品『タカヤ-おとなりさんパニック!!-』をベースに物語が構成されており、当初はラブコメ作品だったという経緯を持っている。それを踏まえると、読み切りから連載終了に至るまで、タイトル、ジャンルともに、なんと2度の大きな路線変更をしたことになるのだ。
タイトルや作風の変化もさることながら、一度聞くと忘れられないインパクトのあるセリフも多く、まさに知る人ぞ知る名作となっている。
長く連載を続けていると、作風に少なからず変化は起こり得るものだろう。だが、今回紹介した作品は、連載当初とは“まったく”といって良いほど違った形に路線変更していったものばかりだ。
思い切ったギャグ路線や、異世界でのバトルなど、いずれも連載初期の作風からは予想できないものばかり。なかには展開に合わせタイトルまで変化したものもあり、当時の読者の驚きはとてつもなかっただろう。