
1977年から連載開始された、昭和を代表する松本零士さんの代表作『銀河鉄道999』。本作は機械の身体を手にしたい主人公・星野鉄郎と謎の美女・メーテルが、宇宙の星を旅するストーリーだ。
999号が停車する数多くの駅には、地球とは異なる文化やルールが存在するが、そんな星のなかには、あまりにも理不尽で残酷なものも存在した。仮にそのルールが地球に適用されれば、社会の秩序は一気に崩壊してしまうだろう。
今回は、信じられないような「残酷すぎるルール」がある星たちを紹介したい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■夜なら普通の人間を射撃しても良い…「出発のバラード」地球
『銀河鉄道999』の物語は、鉄郎が住む星・地球から物語が始まる。しかし、この世界の地球には、実に残酷な法律があった。
第1話「出発のバラード」では、いきなり鉄郎の母親が機械化人の機械伯爵に殺されてしまう。その後、鉄郎は999号に乗ることを決意するのだが、その前に母親の復讐として機械伯爵たちを殺すべく、行動に移そうとする。
そんな鉄郎にメーテルは危険だと忠告し「機械の体の人はふつうの体の人間を夜、外で見かけたら撃ってもいいことになってるんだから」と、伝えるのだ。つまりこの地球では、夜になると機械化人が普通の人間を射殺しても良いというルールがあるのだろう。
その後、鉄郎は機械伯爵の家に乗り込み、彼らを全滅させた。それでも彼の怒りはおさまることがなく、“いつか強い機械の身体を手にしたら地球の機械人間どもをみな殺しにしてやる”と叫んでいる。まさに復讐の連鎖が起きているのが痛々しい。
ここに登場する地球では生身の体の人間よりも機械化人が強くなっており、人口も機械人間のほうが多いのかもしれない。今の日本も徐々に人口が減っているが、いつかアンドロイドの数のほうが多くなる可能性もあるだろう。そんな遠い未来、“夜なら普通の人間を撃っても良い”といった恐ろしい法律ができていないことを願うばかりである。
■光る部分の良し悪しで一生の運命が決まる「螢の街」
続いては、「螢の街」のエピソードで登場した、見た目でその人の地位が決まってしまう不条理なルールを紹介したい。
光が点在する「真理子の螢」という駅に降りた鉄郎とメーテル。そこで鉄郎はフライヤという貧しい女性と出会い、夜に彼女のアパートを訪れることとなる。
停電した部屋で鉄郎が見たのは、フライヤのまだらに光る体だった。この星の人間は、生まれつき体が光る構造になっており、体全体が光る人は美しいと評価され、フライヤのようにまだらに光る人は醜いとされるルールがあった。彼らにはいい仕事先もなく、どんなに働いてもそこから抜け出せず、貧しいままなのだ。
その帰り道、鉄郎は全身が光る男とぶつかった際「ぜんぜん光らないバカもいるのか!!」「そんなきたない体をもって二度とこの星へ来るなよな!!」と、暴言を吐かれる。
星を出発する日、偶然にも再びその男と会った鉄郎。男がフライヤを差別し暴力を振るう様子を見た鉄郎は銃での決闘を申し込み、“決められた地位を当然だと思って暮らしているやつなんて怖くない!”と言って震え上がらせるのであった。
鉄郎はフライヤを苦しめる男に怒りをあらわにし、見事に退けた。メーテルも「今までで一番カッコよかったわ、鉄郎……」と、褒めている。
生まれつきの容姿で地位が決まってしまうようなルールは、決して容認してはいけないのだ。