■ギャップが衝撃的だった『暗殺教室』茅野カエデ

 最後は、松井優征氏による『暗殺教室』(集英社)で描かれた、ヒロインである茅野カエデの裏切りだ。

 陽気でかわいらしいカエデはクラスのムードメーカー的な存在で、「殺せんせー」の名付け親でもある。みんなのサポートを率先して行い、友達からの信頼も厚い。

 殺せんせーを巨大プリンでおびき寄せ、それを食べた瞬間に爆殺するといった、奇抜でかわいらしいアイデアを提案したこともある。そんな人柄からも裏がなさそう……と思えたが、それは擬態にすぎなかった。

 カエデの正体は、E組の前担任である雪村あぐりの妹・雪村あかりだ。あぐりはかつて殺せんせーが原因で、不幸にも命を落としてしまった。それは事故のようなもので、彼女本人は殺せんせーを恨んでなどいなかった。しかし、カエデはその事実を知らず、殺せんせーに復讐する機会を虎視眈々と狙っていた。

 そしてある日、何の前触れもなく触手を使って殺せんせーを襲撃すると、対先生物質のBB弾で敷き詰めた落とし穴に誘導する。

 かなり大掛かりな仕掛けをしていたほか、触手を移植するというリスクも負っていたので、復讐のことしか考えていないのが理解できた。冷徹で殺意に満ちた「あかり」に、ヒロイン・茅野カエデの面影はなく、そのギャップには背筋が寒くなるほどだった。

 触手に関しては伏線が張られており、襟足の下あたりをよく観察すると触手の先端のような影がわずかに確認できる。他に「ぷるんぷるんの刃だったら他にも色々持ってるから」といった意味深な発言などもしており、あらためて読み返してみると驚かされる。

 

 まさかの裏切りを見せたキャラは、必ずしも悪意を持って裏切っているわけではない。キャラによってはやむを得えない事情を抱えている場合があるから、同情もしてしまう。

 さらに裏切りに至るまでに細かな伏線が散りばめられており、後になって見返すと構想が緻密に練られていたことに驚かされる。あなたの印象に残っている「裏切りキャラ」は誰だろうか?

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