■映画で語られた『デスノート』の続編

 たとえば、2003年から2006年にかけて『週刊少年ジャンプ』で連載された原作:大場つぐみ氏、作画:小畑健氏のタッグによる『DEATH NOTE』では、意外なキャラによるスピンオフ映画が作られている。

 『DEATH NOTE』初の実写化となったのは、2006年に公開された前・後編の映画。夜神月役に藤原竜也さん、そしてL役には松山ケンイチさんが起用された作品で、その再現度の高さから松山さんの出世作ともなった映画だ。

 2008年にはそのスピンオフ作品『L change the World』が公開。実写映画のその後となる、Lがノートの効果で死亡する23日間を描いた壮大なストーリーだ。

 ここまでを知っている人は少なくないだろう。ただ、シリーズはまだ続く。2016年公開の映画『デスノート Light up the NEW world』は、東出昌大池松壮亮菅田将暉が演じる「3人の天才」が主人公の映画だった。

 同作は2015年7月クールのドラマ『デスノート』の最終回終了後に公開が発表された映画だが、ドラマと話は繋がっておらず、2006年の映画の続編となっている。つまり、本編で月もLも死亡した、あの「キラ事件」から10年後の2016年を描いているのだ。

 原作ではルールのみが示されていたものの詳細は描かれなかった「人間界で同時に存在していいデスノートは6冊まで」というルールがメインで扱われており、監督のインタビューによると、「(原作の)大場先生から死神界の思惑のアイデアをいただきました」と、原作者とのディスカッションによって生まれたものだという。

 なんとこの映画では、原作漫画や実写映画では生き残っていた、メインキャラクターの弥海砂や捜査本部の松田も登場し、そして作中で死亡してしまう。原作漫画と地続きの物語ではないとはいえ、正式な続編ということで、この2人の死には驚かされた。特に松田の死亡シーンは、原作の彼のおトボケ具合を知っているファンにとってはショッキングなものだったに違いない。

 原作終了後から10年後に撮られた映画のため、意外なストーリーが描かれた同作を知らないというファンは多いかもしれない。

 ほかにも、古くは『キン肉マン』の『闘将!!拉麺男』や、『修羅の門』の外伝『修羅の刻』。現在では『カイジ』シリーズから生まれた『中間管理録 トネガワ』や『1日外出録ハンチョウ』に、『名探偵コナン』の犯人を主人公にした『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』など、スピンオフとして数々の作品が生まれている。

 「意外な姿」が見られるというのが楽しみのジャンルだが、最後は社会現象を巻き起こした『美少女戦士セーラームーン』の武内直子氏による『コードネームはセーラーV』を見ていきたい。1991年に『なかよし』の姉妹誌『るんるん』で読み切り作品として生まれた同作は、『セーラームーン』にも登場するセーラーヴィーナスが主人公の物語だ。

 実は本作品は『セーラームーン』の『なかよし』連載開始より早く発表された漫画で、スピンオフというよりは原案で、本編の前日談となる。一時期は『なかよし』にて並行して連載されていた。

 細部にセーラームーンの原点を感じる設定があり、アイドルや恋愛など女の子の好きなものを詰め込んだ、読んでいるだけでワクワクを感じるところは共通している。

 ヴィーナスはそもそも、本編ではセーラームーン(プリンセス)の影武者として登場した存在である。『セーラームーン』を知った上で、本編軸よりも前に一人で戦士として活躍していたヴィーナスの姿を知るとエモさが倍増する。

 せっかくなら、本編のみではなく、重要キャラが活躍するスピンオフも抑えておきたいところ。そうすれば、原作の世界観がさらに深みを増すことだろう。

 

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