■時代が変わっても「問題」は続く

 『問題提起シリーズ』の中には薬物依存やHIV感染など、普段の生活からは程遠く思えて共感しづらいテーマもあったが、それでも「怖いから手を出さないようにしよう」と思える作品ばかりだった。しかし、同世代の読者の中には、我々が身近ではないと感じたこれらのテーマを、切実な問題として悩んでいた人がいたかもしれない。

 近いようで遠いような、遠い世界のようで身近に実際に起こっているような物語を描き続けてくれた『問題提起シリーズ』は当時の中高生にとって、やはりバイブルのような存在だった。そして、物語の終盤で、恋人や家族の言葉、また自身の中での気づきによって主人公が自分の本当の気持ちと向き合い、更生に向かう様子には心が引き込まれるフレーズも多かった。

 こうしたシリーズを描いてきたももち氏は、2017年より『おとなの問題提起』シリーズも連載。扱うテーマはパパ活、婚活、社内でのセクハラ。当時の読者たちがちょうどまた、新たに直面する内容だ。

 たとえば「出会い系」が「パパ活」になるなど、当時から名称や社会の認識も変わったが、「ちょっとだけなら」とほんの少しの誘惑に若者の心が揺れ動いてしまい、破滅の道に進んでしまう可能性はいつの時代も変わらない。

 また、上記の通り令和になって様々な「ハラスメント問題」が大きく取り上げられ、配慮されるなど、ある意味では生きやすくなった一方で浮上してくる新たな問題もある。平成も令和も、女性たちが変わらず直面するこれら問題をももち氏は描き続けているのだ。

 

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