「リアルすぎて心が痛い…」平成の女子中高生がドキドキした「ももち麗子」問題提起シリーズの“身近な恐怖”の画像
デザートコミックス『問題提起シリーズ であい』(講談社)

 SNSを中心に「平成カルチャー」が見直されている昨今。音楽やファッション、そして漫画などさまざまなものがリバイバルをしている。

 そんななか、少女漫画雑誌『デザート』(講談社)で不定期連載されていた、ももち麗子氏の漫画『問題提起シリーズ』を中高校生時代の愛読書として懐かしむ女性は多いのではないだろうか。同シリーズは、いじめ、万引き、自殺、セクハラ、万引き、出会い系など若い女性にとっての身近な問題や、当時社会現象になっていた問題を取り扱った作品シリーズで、累計部数は600万部を突破している。

 1998年に『いたみ』がシリーズの最初として刊行され、2008年の『こころ』まで続いた。作品の主人公は高校生が多かったが、作品内で起こる出来事や会話の内容がまだ「自分たちより少し大人の世界」の出来事のように感じていた中学生の頃に、興味本位と背伸びしたい気持ちで読んでいたという読者も多いだろう。筆者の周りでも中学時代にこのシリーズの回し読みがはやっていた。

 なんといっても『問題提起シリーズ』はそのリアルさが当時の中高生の心をつかんでおり、今改めて読み返しても当時の空気感が詰まった作品だと感じる。

※本記事は各作品の内容を含みます。

 

■社会問題だった出会い系にセクハラ

 筆者が印象に残っているのが、2003年に出会い系をテーマに描かかれた『であい』だ。

 今では「パパ活」と呼び名が変わったが、当時では「出会い系」という言葉に象徴されるさまざまなサービスが巷に広まっていた。作中の描写を振り返ると、彼氏が携帯電話を持っていないことに悩む主人公の姿があったり、「テレクラはもうダメさ」「こーゆーのって最近ほとんどインターネットのだよね」というセリフがあったりと、現代ほどネット社会が成熟していなかった頃のシーンがちらほらとある。

 ただ「問題」は平成も令和も変わらない。彼女らは出会い系サイトの利用から、ゆくゆくは図らずも親父狩りにと、行為を発展させていってしまう。初めは「メールだけ」だったところから、「会って食事だけ」「下着を売るだけ」とどんどんエスカレートし、それに気持ちが慣れていってしまう。その安易さもリアルに描かれているのだ。

 このように、当時の10代女性の置かれた環境をリアルに描いていた同シリーズ。もうひとつ、改めて読み返して、心にグッときたのが2001年に描かれたセクハラをテーマにした『なみだ』だ。

 テニス部に所属する主人公は、顧問から生理の日を聞かれたり、体を触られたり、個室に呼び出されて体の上に乗ってのマッサージをさせられたりという数多のセクハラに悩まされていた。他の部員も被害に遭っていたものの、それぞれが「自分の気にしすぎかも」という思いで心のうちに留めてしまい、指導の腕だけは確かな顧問に部員たちは何も言えなかった。

 生活に支障をきたすほど嫌な気持ちになっているにも関わらず、勇気を出しても軽くあしらわれたり、他の先生も真剣に取り合ってくれない。

 被害者である自分自身すら「本当にこれを問題にしていいのか? 自分が過剰なだけじゃないのか? 勘違いだったら恥ずかしい」と思ってしまうのは、この年代に限らず、こういった被害の経験のある人の多くが抱く気持ちだろう。

 現代はセクハラに限らずハラスメントに関する問題が大きく取り上げられ、「相手が嫌な思いをしたらハラスメント」と定着しているが、『なみだ』が描かれた当時は今よりも泣き寝入りをせざるを得ない状況が多かったように思う。苦しく、モヤモヤしてしまう描写があるが、最後はスッキリする展開があるため、安心して読み進めてほしい。

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